馬の肢を守る「ワンコ」
今日は馬の肢を守ってくれる「ワンコ」についてご紹介していきます。馬の肢を守ってくれる装具にはほかに、プロテクターがありますが、「ワンコ」とは使用目的が違うようです。「ワンコ」とは一体、どんなものなのか?どんな時にどんな馬たちにワンコを装着してあげるといいのでしょうか。一緒に考えていきましょう。
ワンコとは
ワンコは、馬の前肢に装着する装具で、後肢で前肢を踏みかけたり、後肢の踏み込みが深くて前肢に追突してしまうときに受傷するのを避けるために使用する装具です。また、ワンコを履かせると後肢で前肢の蹄鉄を踏んでしまうことも少なくなり、落鉄も減ると言われています。英語では、オーバーリーチ(追突の意味)ブーツと呼ばれますが、その形からベルブーツと呼ばれることもあります。
ワンコは走るたびに後肢が前肢にぶつかってしまう馬には必須のアイテム。放牧地でも装着している馬もいるんですよ。衝撃で怪我をしないように肢や爪を守るので、ワンコは消耗するのもとても早く、以前は耐久性に優れているゴム製のものが一般的でした。現在では、フォーム素材をつかっているもの、ボアを使っているもの、追突しやすい部分にクッションが縫い付けてあるものからゲル製のものまで幅広いデザインや素材のものが販売されています。最近では解剖学的な見地からデザインされており、馬にも負担が少ないデザインのものまであるんですよ。
ワンコはパートナーの動き方のクセだけではなく、その日の天候やTPOに合うものを選ぶのもいいかもしれません。例えば、ゴムのワンコはぬかるんだ馬場で使ったあとでも思いっきり洗うことができるので、ぐちゃぐちゃの馬場でもためらわずに使えます。また、障害を飛ぶ時に使ったりする場合は軽くて、あまりかさばらない高機能なワンコがいいかもしれません。馬具の中では比較的安価なものですので、使い分けるのもいいかもしれませんね。
最近では、ロングワンコと呼ばれる靴下のようにフィットする素材で作られたワンコも出てきています。このタイプのワンコは主に「クモズレ」と呼ばれる後肢の球節下部への怪我を予防するものです。競走馬がクッション性の高い馬場を走る場合、肢をついた際に蹄が沈み込んで、肢と馬場の表面が擦れて怪我をすることがあり、これを「クモズレ」と呼びます。この怪我を予防するためには靴下タイプのワンコがぴったりのようです。しかし、馬場の砂がワンコの上部から入りこまないようにすることや上から下にずれてこないようにすることに注意して装着しなくてはならないので、少し慣れが必要かもしれません。
プロテクターとの違い
では、同じように肢を守るためのプロテクターやバンテージとワンコは何が違うのでしょうか。プロテクターやバンテージは前肢同士や後肢同士が擦れてしまう怪我を予防するために使われます。そのため、後肢による前肢の踏みかけや追突の怪我を防ぐ効果は期待できません。追突では蹄冠(ていかん)や蹄球(ていきゅう)に負傷することが多いので、この部分をカバーして守るのがワンコです。この部分はプロテクターでは守ることができません。そのため、前肢や後肢同士も擦れるし、追突や踏みかけも起きるような馬たちにはワンコとプロテクターを併用することもあります。
正しい付け方
ベルクロがついていないスリッポンタイプのゴム製ワンコやフィットする靴下タイプのワンコの場合は、まずワンコを裏返しにします。裏返しの状態で広い方から穴を広げて馬の肢に履かせます。馬の肢を下ろしたら、ワンコを繋(つなぎ)の位置まで下げて表に返します。靴下タイプの場合は少しずつ表に返しながら、正しい位置に装着していきます。このタイプの場合は、装着位置が低すぎると危険ですので、気をつけてください。球節の上あたりをテープで止めたり、ロングワンコの上部を粘着性のバンテージで巻いてズレを防ぐような工夫をするといいかもしれません。
ベルクロがついているタイプのワンコは装着もとっても楽ちんですよ。慣れない方はこのタイプがいいかもしれません。ベルクロを外して、ワンコを繋部分に装着します。ベルクロは前に来るように装着させるデザインがほとんどです。ワンコと馬の肢が擦れてしまうのが心配な方はボアつきの肌へのあたりが優しいものを選んで購入されると良いでしょう。
ワンコは左右で形が違うので、左右を間違えないように装着しましょう。ベルクロがきちんとかみ合って、ずれたり、落ちそうになったりしていないか確認してくださいね。運動中に下にずれてきたり、脱げてしまうと大変危険です。また、きつすぎるのも血行が悪くなってよくありませんので、気をつけましょう。
まとめ
いかがでしたか。今回はワンコについて、ご紹介しました。馬にとって、肢や蹄は第二の心臓とも言われるほど大切なものです。愛馬やパートナーの怪我を予防して、人馬共に安全な乗馬を楽しむためにはとっても大切な装具です。踏みかけや追突によって、受傷したことのある馬たちにはご使用をご検討ください。落鉄が多い馬たちにお試しいただくのもいいかもしれません!