【比較的新しい馬術競技】引退競走馬杯とは

華々しくも過酷な競馬の世界で、脚光を浴びる競走馬はごくわずか。
多くの競走馬たちは「レースに勝利できない」「怪我や病気で出走が難しい」「年齢による能力低下」などの理由で、引退を余儀なくされています。その数は実に年間約5000頭にのぼり、引退後の新たな活躍の場はまだまだ足りていないのが現状です。
皆さんは引退した競走馬たちがその後どのような道を歩んでいるかご存じでしょうか。
今回は馬を愛する皆さんに知っておいてほしい、引退した競走馬の為に近年取り組み始めた「引退競走馬杯」についてお話したいと思います。
引退競走馬杯とは

昨今は引退した競走馬がまた次の場所で活躍できるよう、様々な試みやその認知が高まってきたように感じます。
「引退競走馬杯」、通称RRC(Retired Racehorse Cup)と呼ばれている乗馬競技会もその内のひとつ。
引退競走馬杯とは、競走馬登録されていたサラブレッドが引退し、リトレーニングした後に乗用馬となって出場する競技会の事です。2018年に障害馬術と馬場馬術の2種目での開催から始まり、その後2022年には総合馬術が、2025年にはTRECが新たに追加されました。
この競技会はJRA(日本中央競馬会)による特別振興資金助成事業の一環として、全国乗馬倶楽部振興協会が主催となって開かれています。1年間で複数回の予選大会を実施し、年末には馬事公苑で成績上位馬を対象としたファイナルコンテストが行われ、年間グランドチャンピオンを決定します。
もともと引退競走馬のセカンドキャリアとして、乗馬や馬術は古くから活躍の場を提供してきました。しかし従来通り競走馬を乗用馬として受け入れるだけでは、今後さらなる馬事文化の発展は見込めません。そこで「引退競走馬杯」を開催する事で、キャリアを変更した馬の中で成績優秀馬を表彰する機会を設けたのです。それにより引退後の馬の活躍を広く知ってもらう、乗馬や馬術の魅力を伝えてさらなる認知と乗馬人口の拡大を図るなどといった、乗馬や馬術の発展にとっていいきっかけになればと期待が高まっています。
その他にも乗馬や馬術の普及に欠かせない大人しくて乗りやすい乗用馬の育成にも力を入れていますし、引退競走馬のリトレーニング技術の向上や、馬に関わる人材育成の為の奨励金の交付、そして引退競走馬のセカンドキャリア形成の始まりが引退競走馬杯を通じて直接的に乗馬や馬術への入り口として定着することを目指しています。
出場条件

出場条件は以下のように定められています。
・公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルに血統登録(内国産、外国産を問わず)されたサラブレットであること
・「障害馬術/馬場馬術/総合馬術」
JRA(日本中央競馬会)、NAR(地方競馬全国協会)の競走馬として、最終レースを当該年度3年前の1月1日以降に出走した経験を持つ馬齢3歳以上であること、また未出走は3歳以上7歳以下まで(ただし「出走取消(競走除外)」は出走歴に含まない)
・「TREC」
JRA(日本中央競馬会)、NAR(地方競馬全国協会)の競走馬として、最終レースを当該年度5年前の12月31日以前に出走した経験を持つこと、また未出走は8歳以上
・マイクロチップ等を用いた個体識別を行うこと
まずこの条件をクリアした上で、引退競走馬杯に出場できるのは最長でも引退後3年半くらいまでの馬と決められています。このように参加対象を制限する事で、引退~リトレーニング~競技会出場までの期間に差をつけず、第二の馬生をスタートさせたばかりの馬のみが出場できるようになっています。
そして出走条件には、馬のウェルフェア(FEI馬のスポーツ憲章)に十分配慮する旨も示されています。特に最終出走から競技会エントリーまでは、馬体のケアやリトレーニングの為の適正な期間を設けるなど気を配る必要があります。
また一般観戦者等が競技について理解しやすいよう、オープン参加(表彰対象外の出場)は認められていません。
競馬に出走していない馬でも出場できる?

出場条件の項でも言及した通り、レースに出走していないサラブレットでも引退競走馬杯に参加可能です。
障害馬術・馬場馬術・総合馬術は3歳以上7歳以下、TRECは8歳以上と、公式の大会出場条件では未出走馬についても触れられています。
サラブレットは1年で約8000頭生まれ、様々な要因で全ての馬がデビュー戦に出走できるわけではありません。競争引退馬だけではなく、競走馬になれなかった馬のキャリア形成も同じように大切だと考えられているのしょうね。
まとめ
競走馬の育成には様々な方が携わっています。馬の出産から成長までの繁殖を行う生産牧場の方々、仔馬を競走馬へと調教する育成牧場の方々、そして競走馬になれば騎手、調教師、厩務員、その他にも獣医師、装蹄師、ホースセラピストなど。そして一心に声援を届けてくれるファンの方の存在も忘れてはいけませんね。
たくさんの愛情を注がれた競走馬としての馬生が終わりを迎えても、馬の寿命が尽きるわけではありません。
全国の乗馬クラブには元競走馬の馬がたくさんいると思いますが、彼や彼女たちもキャリアチェンジをして立派に今を歩んでいます。そして多くのライダーさんからの愛情を受けていることでしょう。
引退競走馬杯の活動が今後も拡大し、引退馬の活躍を目にする機会がどんどん広がっていくといいですね。