【初心者でもできる】馬の体調チェック法
馬をはじめとした動物たちは、野生のころからのなごりで、体調不良をギリギリまで我慢することがあります。特に馬は暑さが苦手な動物です。いまだ残暑も厳しく、馬にとっては辛い時期が続きそうです。まだまだ、馬の体調管理には気が抜けない時期ですよね。今回の記事では、体調管理のチェック方法のうち、道具やテクニックを必要としない呼吸数を取り上げます。
安静時の呼吸数を知っておこう
成馬の安静時の呼吸数は8〜16回/分と言われています。仔馬はまだ心肺機能が成熟していないため、呼吸数も高くなることが多く、当歳馬(0歳馬)では20〜24回/分に達することもあるとか。1回の呼吸で換気できる空気の量は5〜6リットルで、人間が安静時に取り込める空気の約10倍です。
ちなみに競走馬の呼吸数は競走時には150回/分に達するそうです。競走時は一完歩ごとに重心が移動することにより、消化器をはじめとした臓器が前後するため、呼吸数と完歩数が一致します。そのため、馬は速く走れば走るほど、呼吸数が上がることになります。一完歩に呼吸を2回はできませんが、息を止められるそうです。最新の研究では、スタート時に息を止めていることが分かりました。
また、基本的に動物は体が大きければ、大きいほど呼吸数が低下する傾向にあります。ヒトは16〜18回/分、ハムスターは135回/分ほど、イヌは15〜20回/分、ゾウは6回/分。馬の体の大きさで150回/分まで呼吸数が上がるのは、動物界でも珍しいケースのようです。敵から逃げるのに速く長く走れるよう、酸素を多く取り込めるような仕組みになったと考えられます。
呼吸数の確認の仕方
馬は喉のつくりが人間と異なるため、鼻でしか呼吸ができません。そのため、一番簡単なのは鼻を触って、動いている回数を数える測定方法です。胸部やヒバラの浮き沈みを呼吸1回として数えてもOKです。呼吸数を6秒はかって10をかけるなど、短い時間で呼吸数をはかって、毎分の呼吸数を算出してください。安静とは何もせずにじっとしている状態を示します。
コンスタントに測定しておけば、健康な状態での安静時呼吸数が分かってきます。毎日、同じ時間に実施するのを習慣化させてしまうといいのかもしれませんね。
呼吸数から分かること
呼吸数にも馬の個体差があります。そのため、愛馬の安静時呼吸数を把握しておくことが非常に重要です。先に紹介したのはあくまで基準値です。その馬の年齢や個性などから、安静時呼吸数が基準値から、多少外れることも考えられます。とはいえ、安静時呼吸数が30回/分を超えると何か異常があるかもしれないと考える獣医師が多いようです。それでは、呼吸数の上昇にはどのような原因が考えられるのでしょうか。
呼吸数が上昇する主な原因
体温が上昇している場合には、呼吸数が高くなります。普段の呼吸数より上昇している場合は、まず熱を計ってみましょう。発熱が確認された場合はその原因によって、対応が変わります。若い馬であれば、放牧や長距離輸送の疲れで熱発することもありますし、熱中症でも体温は上昇します。
ウイルスや細菌に感染した場合は呼吸数が上昇し、発熱を伴うこともあります。特に気管支炎や肺炎、胸膜炎などは呼吸数が急激に上昇することもあるようです。こういった呼吸器への感染症の治療は早ければ早いだけ、予後も良好なものになります。どのくらいの期間で、どれくらい呼吸数が上がったのか、獣医師に伝えられるといいですね。
また、疝痛などの痛みを伴う疾患によっても呼吸数が上がります。人間もどこかが痛い時は浅い呼吸になり、呼吸数も上がりがちですよね。馬も同じです。
呼吸数の上昇が分かったら?
馬の置かれた状況や環境も踏まえて、どのような処置をすればいいのか、迅速な判断が必要です。まず、他に症状はないか、普段と違ったこと(環境が変わったや長距離の輸送があったなど)がなかったか、呼吸のしかたが普段と変わりないか、確認しましょう。例えば、肺に疾患がある場合は胸で呼吸するのが苦しいため、腹式呼吸になります。疝痛の場合は胸式呼吸になります。健康時の呼吸では腹式と胸式の呼吸が同時に認められます。
熱中症であれば、鼻の動きが大きく速くなり、後肢の股などから異常なほどの発汗が認められます。太い血管が走っている股や首に水をかけて、体温を下げる応急処置をしながら、獣医師の診療を待ちましょう。
しかし、呼吸数上昇や発熱の原因が分からない場合や治療が必要な場合は、速やかに獣医師に診てもらいましょう。獣医師が動物の体調管理に用いる、Temperature(体温)、Pulse(心拍)、Respiration(呼吸)の頭文字を取った「TPR」と呼ばれる3つの指標は、呼吸上昇の原因を特定するのに非常に参考になります。獣医師の診療時はもちろん、可能であれば、普段から体温と心拍数も測定できるといいですね。愛馬の健康管理に必ず役に立ちますよ。
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まとめ
いかがでしたか。呼吸数は体温や心拍数と違い、測定のために道具を準備する必要もありません。今日からでも、始められますよ。是非、愛馬の健康管理に役立てください。