【仲良くなるために】馬の叱り方
馬は体が大きいので、ちょっとしたいたずらのつもりでも、人間にケガをさせてしまう可能性があります。そんな事故が起きてしまえば、人間にとっても、馬にとっても、不幸です。馬ともっと仲良くなるためにも、きちんと叱ることが大切です。この記事では馬の正しい叱り方について探っていきます。
初心者は「叱るな」?
馬は鞍上を見ると言います。初めて騎乗する乗り手のことを試してくるのは、よくあることです。突然、止まってみたり、合図を出されても無視したり、お手入れのときにちょっかいを出してきたり…。馬には人間がリーダーであり、リーダーの指示には従ってもらうことを伝える必要があります。最初のころは馬が思わぬ動きをしただけで怖くて、感情的に高い声で叱ってしまうかもしれません。しかし、それは逆効果です。ぐっと落ち着いて冷静に叱りましょう。
初心者だから叱ってはいけない、ということはありません。初心者に対してでも、ベテランに対してでも、馬がよくないことをしてきたら、そのタイミングで叱ります。叱らずに許してしまえば「次に同じことをしても怒られないだろう」と間違った印象を馬に与えてしまい、問題行動を助長させる可能性があるからです。
子供を叱るように
馬の知能は3歳児と同じくらいだと言われています。3歳児を叱っているのを思い浮かべてみてください。悪いことをしたタイミングで「やってはいけない」と教えないと伝わらないのではないでしょうか。悪さをしたタイミングで、すぐに低い声で目を見て「ダメ」や「いけない」など、短い言葉で馬に伝えるように叱りましょう。毅然とした態度で叱ることが大切です。騎乗中であれば、落ち着いて、一旦、停止して後退させたり、小さく巻き乗りをしたりするのもいい方法です。
当然ですが、感情にまかせた暴力はいけません。暴力に訴えるのなら、馬と仲良くなれることは絶対にありません。
資格は必要?
競走馬の調教師を生業にするのでなければ、馬の調教に必要なライセンスや資格はありません。資格があるとすれば、経験と馬との信頼関係でしょうか。
調教をするには、馬ごとの性格や特徴に応じて微調整をしていく必要があり、ある程度の経験が必要です。また、信頼関係のある人馬となら、調教もスムーズに進むことが多いでしょう。
「調教」とは目的に応じて動物を訓練すること。広い意味では、馬と人間の接するあらゆる場面が調教と言っても過言ではありません。そう考えると、初心者でも騎乗準備、お手入れ、騎乗中、いずれかの場面で馬が望ましくない行動をした際には、きちんと叱らなくてはなりません。
性格の見極め
人間の性格が十人十色のように、馬の性格も1頭ずつ違います。最初は性格の見極めが難しいかもしれません。まずは、自分の指示に従ってくれたら、思いっきり褒めましょう。良くないことをしたら、叱ることから始めましょう。
叱られたときの反応は馬によって、さまざまです。全く気にしない馬もいれば、落ち込んでしまう馬もいるかもしれません。叱ったときの反応も確認して、馬の性格を把握するための参考にしましょう。少しずつ馬の性格も分かるようになれば、馬ごとに叱るときの加減も分かってくるでしょう。
反抗と反応の見極めも大切
騎乗中には、物見をしたり、音にびっくりしたりして、馬が思いがけない動きをすることがあります。初心者には悪いことをしたのか、馬が何かにびっくりして反応したのかの見極めが難しいかもしれません。馬が反抗したら叱らなくてはなりませんが、何かに驚いて反応したり、パニックになっているときは、まずは馬を落ち着かせなければなりません。落ち着いた声で「ほーほー」となだめ、「大丈夫だよ」と伝えてあげましょう。乗り手が一緒に驚いてしまうと、馬はさらにパニックになることがあります。乗り手はリーダーとして、叱るときも、なだめるときも常に冷静に対処する必要があります。
初めてパートナーを組む馬の性格については、鞍上を見るタイプなのか、物見をするタイプなのかなど、インストラクターにあらかじめ確認するといいかもしれません。
信頼関係を築くためには?
まずは、馬に自分のことを覚えてもらいましょう。覚えてもらうためには、馬にとって嫌なことをしないことから始めます。
そのためには普段から馬をよく観察する必要があります。例えば、腹帯を締められるのが嫌いな馬がいたら、ジワジワと急に苦しくならないように、ゆっくりと優しく締めるのを心がけましょう。お手入れや馬装などのコミュニケーションを通して、仲良くなりたいという気持ちを馬に伝えます。
そのうえで、悪いことをしたら叱る、指示に従ってくれたら褒める、とメリハリをつけ、愛情を持って接していれば、馬も少しずつ距離を縮めてくれるでしょう。馬が乗り手リーダーとして認めてくれるような信頼関係を築くことができれば、騎乗時もスムーズに指示を受け入れてくれるようになるはずです。
まとめ
いかがでしたか。馬が悪いことをしたときには「怒る」のではなく、落ち着いた態度で毅然と伝えるように「叱る」ことが大切です。アメとムチを上手に使い分けて、馬に信頼されるリーダーになりましょう。