第二の馬生。競走馬の転職もラクじゃない!

オルフェーヴル

競走馬になるために年間7,000頭のサラブレッドが生まれてきます。そして、年間5,000頭の競争馬が引退して第二の馬生を歩き始めます。その中には、生まれながらに競走馬にむかなかった馬、病気やケガで3歳・4歳と子供ながらに引退する馬もいます。
サラブレットの平均寿命は25歳と言われている中、競走馬を引退した馬の転職先はどんなところを想像しますか。競走馬の転職先について紹介します。

競走馬から競技馬へ

競走馬を引退した後の転職の1つとして、馬術競技の競技馬があります。競技馬とは、オリンピックでも種目になっていたような馬術競技に出場する馬のことです。
競走馬から競技馬への転向は簡単にいくのでしょうか。実はそう簡単にはいきません。まずは競技馬になるために改めてトレーニングをうけることになります。

競技馬に求められる資質

ヨーロッパなど馬術競技が盛んなところでは、馬術に適した体のつくり・歩様の品種のうち、さらに選ばれた馬が馬術競技に出場しています。
日本では元競走馬を競技馬にするため、どのようなトレーニングをしているのでしょうか。まず競技馬になるために必要な資質をみてみましょう。
競走馬の頃は、「走れ!走れ!」とただ速く走ることが求められていました。しかし、競技馬に求められるものは違います。
例えば馬場馬術では複数の種類の歩き方をマスターし、正しく美しくステップを踏んだり図形を描いたりする必要があります。そのため大人しく人を乗せて、滑らかで優雅な歩様で競技を行う資質が求められます。
また障害馬術では人馬一体となり、落下などなく、障害物をミスなく飛び越えることが求められます。

競技馬にどうやってなるの?

競馬場は平らなコースを速く走ることを目的に調教されてきました。その馬を競技馬にするためには、そのためのトレーニングが必要になります。
馬は速く走るための走り方から、滑らかで優雅に歩くことを調教されます。また障害を飛び越えるためには、そのためのトレーニングが必要になります。競走馬の頃は障害を飛び越える必要がなかったため、新しい挑戦になります。まずは倒れている木をまたぐところから始め、少しずつハードルを高くしていきます。

競走馬から誘導馬へ

誘導馬は競馬場で出走する競走馬をパドックから本馬場まで誘導することが主な仕事です。その他にもパレードや楽隊を先導したり、馬場管理のため人を乗せたりします。また、競馬場で騎手を落とし、乗り手がいない馬をなだめたり、落ち着かせる役目もあるため誘導馬の仕事は幅広くなっています。

誘導馬に求められる資質

競馬場には元気いっぱいの馬たちがレースを控えています。そこで同じように興奮していては誘導馬にはなれません。またパレードや楽隊を先導するときは、普段と状況が変わります。そういったときにも落ち着いている必要があります。
そのため誘導馬には、温厚で落ち着いた性格が求められます。

誘導馬にどうやってなるの?

誘導馬になるにも改めてトレーニングを受けることになります。また、誘導馬や資質だけでなく別の観点から選ばれることがあります。それは毛の色です。具体的には芦毛・黒鹿毛・白毛などが見栄えがよい馬が誘導馬になることがあります。
また成績を残しながらも種牡馬になれなかったような場合、その知名度から誘導馬になることもあります。

繁殖用として牧場に繋養される

競走馬引退後に繁殖用として第二の馬生を歩む馬もいます。しかし、繁殖用の馬は性格や訓練次第でどうなるものでもなく、血統と成績が重視されます。いわゆる「エリート」でないと付けないポジションです。

繁殖馬にどうやってなるの?

競走馬と繁殖馬の両立はできないため、繁殖馬になるためには中央競馬・地方競馬の競争馬登録を抹消する必要があります。その後繁殖牝馬になるためには、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルに繁殖登録を、種牡馬になるためには繁殖登録の他に種畜検査を受けることになります。
しかし、多くの競走馬の中から繁殖馬のポジションを手に入れるには、成績を残すことが重要視されます。
そのため、「いくつかのレースで勝ちました」というレベルではその道は開かれず、「G1レースで何度も勝ちました」というレベルが求められます。

馬の妊娠期間と出産可能年齢

馬の妊娠期間は330日といわれています。そのため1頭を出産するのに、人間と同じように約1年かかります。
また馬も高齢になると受胎率が落ちてきます。しかし、平均寿命が25年のところ20歳以上でも出産する馬もいます。

乗用馬として乗馬クラブへ

競走馬の転職先として有名なのが、乗馬クラブではないでしょうか。しかし、速く走ることを調教されてきた馬が、大人しく安全に乗馬クラブで人を乗せられるようになるまでは半年~1年の再トレーニングが必要になります。その間、餌代の他に世話や再トレーニングするための人件費や時間がかかるため、競走馬をすぐに受け入れられる乗馬クラブは限られているのが現状です。

乗用馬に求められる資質

「少しでも速く!走れ!走れ!」と闘争心も育てながらトレーニングされた競走馬ですが、乗馬クラブで求められるのは、「安全に人と接すること」です。
競争馬のときと違い、騎乗者はプロではありません。どんな人が乗っても安全で、指示に従う必要があります。また人を乗せているときだけでなく、普段から物音に動じない・勝手に走りださないといった、落ち着いた性格が求められます。

再調教は以外なところでも!

乗馬クラブは、クラブの会員に乗馬の魅力を伝え・上達させるために馬を管理しています。馬を管理するためには、餌代や世話などお金も時間もかかります。
さらに競走馬を乗用馬としてトレーニングするには、その分のお金と時間も必要になり、乗馬クラブで受け入れるのが難しい状況になります。
そこで厩務員を目指す人達の学校で、競走馬を乗用馬へ再トレーニングするプロジェクトがあります。
厩務員を目指すと人たちにとって馬は教材であり、先生でもあります。引退したばかりの競走馬をみることで病気や怪我の処置・治療を学び、トレーニングをすることで人を安全に乗せられる馬にし、転職先に送り出します。
乗馬クラブとしては乗用馬としてのトレーニングが終えていることで、即戦力に近い状態で馬を迎え入れることが出来るため、お互いの思いにマッチしたプロジェクトになっています。

人を癒すセラピーホースへ

ホースセラピーは乗馬だけでなく、馬の手入れ・飼養管理・厩舎管理・馬の観察などを行うことにより、障がい者の運動機能・精神機能を高め、社会復帰を目指すセラピーです。
犬や猫がアニマルセラピーの代表的な存在で、その効果は医療面で認められています。
しかし、馬やイルカなど情緒水準が高い哺乳類と触れ合うことで、他者を信頼できるようになるなどの効果も得られます。
そのような人を癒すセラピーホースも、競走馬の転職先になっています。

ホースセラピーが人に与える影響

まだまだ日本ではホースセラピーがメジャーにはなっていません。具体的な内容とその効果について紹介します。
セラピーを受ける人は、精神機能・運動機能に障がいを抱えている人です。そのような人たちが馬とふれあうことで不安・恐怖感・攻撃的傾向を減少させることができます。
また、乗馬をすることで腹筋・背筋・足腰の筋肉を強化させ、馬の揺れにより内臓を刺激し内臓機能を向上させます。
しかし、セラピーを受ける人によっては乗馬が難しい人もいます。そのような場合、馬の世話や厩舎管理をするだけでも責任感・自立性・協調性などの社会性を養うほか、出来る範囲のお世話を継続的にすることで運動機能の向上が期待出来ます。

セラピーホースに求められる資質

ホースセラピーで使われる馬は速く走る必要も、障害を越える必要もありません。たいてい常歩でゆっくり歩きます。大切なのは、大人しく人懐っこい性格で、既に人間との信頼関係ができており、人間に従順であることです。
また、馬は臆病なため大きな音にびっくりすることがあります。しかし、セラピーホースが物音に反応してしまうとセラピーを受ける人は癒しどころではありません。
物音にも反応しないくらい、穏やかな馬が求められます。
闘争心をむき出しに競走馬をしていた馬をそこまでにするには、人間による再トレーニングの結果です。

まとめ

レースに勝つために生まれ、調教されてきた競走馬。そんな馬たちの転職先はいくつかあります。
しかし、それぞれ求められる資質は違います。しかも、どの転職先でも競走馬では必要だった闘争心が邪魔をしてしまいます。
そのため、再トレーニングが必要不可欠です。人間にとっても転職は一苦労ですが、馬の転職も大変そうです。

 

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