馬のヒゲに注目!

もし「馬の顔を描いて下さい。」と言われたら、ヒゲを描きますか?描きませんか?イラストなどではヒゲが描かれた馬はあまり目にしないかもしれませんね。実際のところ、どうなのでしょうか。そんな疑問を解決するべく、今回はちょっと気になる馬のヒゲについて調べてみました。
馬にヒゲはある?

生えているのか、生えていないのか…意外と気がつかなかった馬のヒゲ。実は馬にもちゃんとヒゲがあるのです!よく観察すると口元や目の下に太くて長いヒゲがあるのを確認できるはず。「触覚毛(しょっかくもう)」と呼ばれています。
現在、多くの国でヒゲのトリミングは禁止。何故かというと、馬のヒゲは洞毛(=血洞毛)といわれる毛状の感覚器官のひとつだからです。ヒゲといってもわたし達がイメージする人間の髭とは少し異なる特別な毛。馬のヒゲは蹄と同様にタンパク質やケラチンなどでできていて、毛根の周りには神経が通っています。
では馬のヒゲは一体何のために生えているのでしょうか。
ヒゲの役割

馬は広い視野を持っているのですが、真正面や長い顔の下は死角になっています。目の周り、鼻孔と上唇の間、下唇の下の下顎に集中しているヒゲは、まさに馬の視界の死角を補うもの。つまり馬にとってのヒゲは、身を守るために大事な役割を担っていると言えます。
例えば水を飲むときにバケツの中の水面を探ったり、飼い葉桶の中の小さなペレットを探したり、夜間や暗い馬房で周囲に障害物がないか確認したり…。ヒゲの先で触れた感覚から物との距離感、質感、温度、形状、動きを識別して、できるだけ危機を回避できるようにしています。まさに優秀なセンサーそのもの。目の周りのヒゲはハエなどの異物を察知し、目を守るために瞬きを促す働きがあります。
また、生まれたばかりの仔馬は大人の馬よりも長いヒゲを持っているそう。顎の下まであるほど立派なヒゲは胎児の発育中に最初に形成される毛髪で、仔馬が母馬の乳頭を見つけて母乳を飲むために発達していると考えられています。
競技馬のヒゲ

オリンピック直前の2021年7月から国際馬術連盟(FEI) は「馬のヒゲのトリミング禁止」の規則を適用しました。
対象は馬場馬術に出場するスポーツホースになりますが、「口や目の周りのヒゲを含む馬の触覚毛の除去の禁止」を正式なルールとし、日本でもこれを受けて日本馬術連盟が2022年4月に同じくルール化しています。馬場馬術、障害馬術、総合馬術を含む全ての競技分野に適用され、ヒゲが除去された馬は競技に参加できないようになりました。(外科手術や、馬の不快感を取り除く目的、治療目的など医学的理由によるトリミングは例外。)
除去されたヒゲは少なくとも2cmまで伸びていないと競技参加は認められません。
それ以前、馬術競技やホースショーなどの世界では、「見た目を整えるためのお手入れ」「馬具装着時の妨げになる」という理由から当たり前にヒゲを剃っていたのだとか。
実際ヒゲが除去されても、すぐに大きな問題が生じるわけではありません。特に人間に飼育されている馬は清潔で安全な寝床があり、栄養管理された食事が与えられているので、生命の危機に直結することは少ないでしょう。
しかし足元や鼻先の距離感が少し鈍くなったり、慣れない場所で不安を感じやすくなったりするという報告もされています。距離感が掴みきれない中での生活は少し不自由と感じるかもしれませんね。
まとめ
かつては見た目を美しく整えるためマナーとして当然の如くトリミングされていたヒゲですが、国際的な機関が禁止にしたことによって「ホースウェルフェア(馬の幸せや快適さ、健康などを大切にする考え)」の動きが広がりを見せています。同時にライダー個人個人の意識を深めるよい機会になったのではないでしょうか。感覚センサーとして重要な働きをする馬のヒゲ。見た目は少しファニーな雰囲気になりますが、実はすごい能力を秘めているようです。








