ブラシを使い分けてブラッシングの達人に!
騎乗の前や後のお世話、それは馬と絆を深める大切なコミュニケーションのひとつですよね。
第一段階としてブラッシングを行いますが、その効果を知っておくと今よりもより配慮の行き届いたお手入れができるかもしれません。今回は一緒にブラッシングに欠かせないブラシについてや、ブラッシングの手順や注意点もご紹介します。
ブラッシングの効果
コミュニケーション
他の動物と同じように馬もお互いに毛づくろいすることでスキンシップを図っていることから、馬との信頼関係を築くのにブラッシングはとても有効です。感謝の気持ちや愛おしい気持ちを込めてブラッシングを行えば仲良くなる近道に。
ブラシをかけていると馬の嫌がるところ、気持ちよさそうにするところも分かってくるそうです。
また馬がいつもお世話をしてくれる人だと覚えてくれたら、わたしたちもうれしいですね。
体をきれいにする
ブラッシングの一番重要な目的は「汚れをとる事」。本当は体を洗ってあげるのがいいのですが、冬は風邪を引いてしまったり、次の人が乗るまでに乾かなかったりと、毎回体を洗ってあげるのはちょっと困難です。しかしきれいにしておかなければ泥やボロなどの汚れ、新陳代謝によるフケ、毛の奥にたまった汗、これらが原因で皮膚炎を起こしたり、皮膚のカサつきやカビが発生することも。そんな時はブラッシングがとても重要です。馬体の清潔を保てるようにしっかりとブラッシングしてあげましょう。
マッサージ
ブラッシングをすることで筋肉を刺激したり、コリをほぐしたりする効果が見られます。騎乗前でしたら馬房でおとなしくしていた馬の筋肉を少しほぐすのに役立ちますし、これから乗せてもらう馬へ礼儀としてきれいな姿で馬場に立たせてあげることができます。騎乗後は筋肉の疲れをとるのに効果的。騎乗前と後にブラッシングするのが理想です。
全身の観察
全身をブラッシングしていると自然と間近で馬の体を見ることになります。それは馬体をチェックする絶好のチャンス。皮膚のコンディションや怪我の有無などに注意してブラッシングを行ってください。馬は草食動物の本能から肉食動物に狙われないよう怪我や弱いところを隠そうとする習性があります。わたしたちがなるべく早くみつけて適切なケアをすることで、悪化を最小限に抑えることができます。
ブラシの種類とそれぞれの用途
ブラシには様々な種類があり、目的によって使い分けています。馬が気持ちよく、そして健康を維持できるようにするため、個々のブラシの特性をいかした使い方をしなければいけません。効果的なブラッシングができるよう覚えておきましょう。
・プラスチックブラシ
毛に付着した泥などを落とします。濡れても大丈夫なのでシャワーをかけながら使う事もあります。
・ゴムブラシ
毛の根本からフケなどの汚れを掻き出します。マッサージ効果を発揮するのがこのブラシ。
・根ブラシ
一本一本の毛が太く長いのが特徴。ゴムブラシで浮き上がってきた汚れや表面の大きな汚れを払います。
・毛ブラシ
毛の流れを整えるための仕上げ用として使用します。根ブラシと比べて柔らかいです。
・金ブラシ
基本的にはそれぞれのブラシに溜まった汚れを取るブラシ。ですが、体毛の長い馬やたてがみを梳かすのに使用することもあります。
・たてがみしっぽブラシ
しっぽやたてがみを梳かします。さらさらになるスプレーをしっぽにかけ、まず毛の先端の方を上から下に向かって梳かし、徐々に上へと移動しながら梳かしていきます。
・フーフブラシ
蹄の表面をきれいにするブラシで毛が固く、頑固な泥の塊を取る事ができます。フーフとは蹄という意味。
手順と注意点
これだけたくさんのブラシがあるとどの順番で使えばいいのか悩んでしまいますよね。効率よく、効果のあるブラッシングをするためには順番も肝心です。注意点も記しておきますね。
まずは「プラスチックブラシ」で固まった泥などなかなか取れない汚れをしっかり梳かして落とします。
次に「ゴムブラシ」を使い、毛の生え際に溜まった汚れを掻き出します。根本から毛を起こすことを意識して、後ろから前に円を描くようにしてください。ブラシのフチを立てると、より皮脂の汚れを取ることができますよ。この時にマッサージ効果があるので、馬の様子を観察してみるとよいでしょう。鼻を伸ばす反応があったらそこが気持ちいいポイントです。
汚れが浮き上がったら「根ブラシ」で表面の汚れを払います。
最後に「毛ブラシ」で毛並みを整えます。馬の毛は基本的に前から後ろ、上から下に向けて流れているので、その流れに沿ってブラッシングを。
気になる時は「たてがみしっぽブラシ」でたてがみやしっぽをきれいにしてあげれば、より完璧な仕上がりになります。
そして基本的なことですが、ブラッシングの時に注意しておきたいことが3つあります。
・立ち位置
ブラッシングの時は馬の様子を観察できる立ち位置、馬の体の中央から少し前脚寄りがベストです。それは蹴られたり噛まれたりしないように注意しておくため。目線はブラシに集中するのではなく、馬の動きをなんとなく把握できるようにしておきましょう。
・馬との距離
あまり馬と近づきすぎると馬体全部が見えにくく、馬の動きが把握できません。ふとした動きで踏まれる危険もあります。後ろに柵があったら挟まれる可能性も。不測の事態に対応できるように馬との距離感は大切です。
・手の位置
ブラシはお尻に近い方の手で持ちます。
例えば馬の左側に立ってブラッシングをする際、お尻に近い右手にブラシを持ち、顔に近い左手は首の中央付近に添えておきます。馬を安心させると同時に、噛まれないようにブロックするためです。
歯を向ける理由として、お返しに毛づくろいをしようとしている場合、遊ぼうとしてじゃれてきた場合、ブラッシングが嫌な場合、じっとしていることにストレスを感じている場合などがあります。
また、耳、目の周り、鼻や口の周り、前脚の付け根部分、後ろ脚の股部分などは感覚が敏感なので、馬の様子を見ながらブラッシングをするのがおすすめです。
まとめ
それぞれの用途に合わせて多種多様なブラシがありましたね。それだけブラッシングが重要だという表れではないでしょうか。
水を弾くようになっている馬の毛はブラシをかけると見た目の美しさが引き立つだけではなく、汚れも弾きやすくなるメリットがあります。今日のブラッシングが次回のお手入れのしやすさに繋がるので、丹念に行っていきましょう。