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馬も「歯」が命!

かつて流行語となった「芸能人は歯が命」という某歯磨き粉のCMキャッチコピーがありました。実にインパクトが大きかったのですが、歯が命なのは馬も同じということをご存じでしょうか。
日常生活の中で馬の歯を気にすることは少ないかと思います。ですが、わたしたちの歯とはちょっと違っていたりして興味深いもの。そして実はとても重要だった馬の歯についてお話していきましょう。

馬の歯の特徴

馬も「歯」が命!

馬の歯は比較的短い草類を食べるのに適した「切歯」、それを磨り潰すための大きな「臼歯」、切歯と臼歯の間には牡馬のみに生える「犬歯」、個体によりますが抜歯が必要な退化した歯「狼歯」という4種類(牝馬は3種類)から成り立っています。狼歯を抜歯したならば切歯と臼歯の間に存在するのは犬歯のみ。「歯槽間縁(しそうかんえん)」という歯の生えてこない部分、ここにハミが収まる形となります。

それでは馬の歯の特徴をまとめてみましょう。

特徴1:歯の生え替わり

わたしたちは全ての歯が乳歯から永久歯へと生え替わりますよね。しかし馬の場合は「生え替わる歯」と「最初から永久歯の歯」が分かれています。さらに生え替わる時期まで決まっているのだとか。そのため生後4歳半までであれば歯の生え方で大体の年齢を知ることができます。
ちなみに歯の生え替わりは2歳半ば~5歳の間。そのピークは競馬のクラシックレースの時期と重なるため、各厩舎は最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、歯の状態に万全の注意を払っているそうですよ。

特徴2:歯の成長

馬の歯は歯根が閉じるまで成長を続け、1年間で2~3mm程度も伸びると言われています。食事のたびに少しずつすり減らし、また伸びるという繰り返し。飼養されている馬は定期的なメンテナンスが必要になってきますが、歯の成長は歯の長さを維持するために得た大事な機能です。

特徴3:歯の構成

わたしたちの歯は上の歯と下の歯が当たる噛み合わせ部分を硬いエナメル質が覆っていて、歯(象牙質)のすり減りを防ぐようになっています。
一方馬の歯はと言うと、噛み合わせ部分にセメント質、象牙質、エナメル質が並んで露出している構造。硬い組織と柔らかい組織が噛み合わせ部分にあることでヤスリのような機能を発揮しているのです。歯がすり減りやすくはなりますが、前述の通り馬の歯は伸びるので問題ありません。

特徴4:エナメルポイント

馬は食事をする時、8の字を描くように上と下の歯を擦り合わせ、すり潰して食べています。このように食事のたびに歯を擦り合わせていると「エナメル尖(エナメルポイント)」と言って、上の歯の外側と下の歯の内側が尖ってしまうことも。そうなると口の中や舌を傷つける、口内炎や咀嚼障害の原因になる、食欲がなくなる、ハミが当たるようになって嫌がるなどの問題が出てきます。
デンタルケアとして尖ってしまった歯は専用のダイヤモンド製の研磨機やヤスリを使って削り整えられます。

馬も虫歯になるの?

馬も「歯」が命!

結論から言うと馬もわたしたちと同じように虫歯になりますし、歯周病にもなります。
人間の虫歯と同様に考えるのは難しいのですが、馬の虫歯は

・糖分の多い餌の摂取により口の中が酸性になる
・表面のセメント質が溶けたすき間に草などが詰まって細菌が繁殖する
・尖った歯の隙間に食べた物が詰まってしまう
・セメント質の形成不全
・歯を作る過程がうまくいかずに突然空洞が現れる

など、様々なタイプのものが存在するとのこと。
虫歯の症状も歯に穴が開くだけではなく、血液中の細菌が歯の根につくと顔が腫れてしまうことも。

ただし、馬は虫歯になりにくいと言います。
人間のように歯磨きをすることはありませんが、よく発達した唾液腺を持ち、自浄作用で口の中を清潔に維持することが可能なためです。

治療方法

馬も「歯」が命!

では実際に虫歯になった馬がどんな治療を受けるのかと言うと、主に「削る」「詰め物をする」と人間と変わりません。

しかし馬の口はこぶしひとつ分しか開かず、さらに奥に深いとあって、歯の検診や治療は困難を極めます。そのためしっかり口を開けておく開口器、奥歯まで照らすライト、角度をつけた馬の歯専用の内視鏡やデンタルミラーなどの道具を駆使して治療にあたるわけです。口の中という狭い空間でも馬になるべく負担を掛けず、最良の治療を成し遂げる知恵と工夫が見られますね。

まとめ

わたしたちも歯に差し障りがあるとQOLが低下しますが、馬は歯の状態が健康に直結するため非常に重要視されています。
病気の予防や健康状態の把握、健康維持のためという、とても大切な観点から欠かすことができない歯のチェックやメンテナンス。
歯を良好な状態に保つということは健やかな日常生活を始め、パフォーマンスの向上などに繋がります。
もし愛馬の飼い葉食いが悪くなった、ハミ受けが上手じゃないと感じたら、歯の状態を確認してみてくださいね。

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