乗馬メディア EQUIA エクイア

メインビジュアル

JRAで行われた暑熱対策と馬の耐暑性

みなさんのなかにも「なんだか夏が年々暑くなってる気がする…」と感じている方は多いのではないでしょうか。暑いのは、人だけでなく馬も同じ。今回の記事では、JRA(日本中央競馬会)が実際に行っている暑熱対策や、馬の耐暑性について解説します!

JRAでの暑熱対策

JRAで行われた暑熱対策と馬の耐暑性

競馬は夏季にもレースがありますが、もちろんコースは屋外なので気温の調節は難しく、また馬たちも過酷な運動をするので熱中症のリスクは高まります。そこで注目したいのが、JRAでの暑熱対策。馬の健康を守るために、どのような対策が行われているのでしょうか?

レース前の飲水解禁

夏に限らず、競馬の中継などで馬が汗だくになっているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。このように、馬たちは全力で疾走して大量に汗をかくため、必要なときにすぐ水分補給をさせてあげたいですよね。

しかし、以前は公正確保のためにレース前の飲水は禁止されていたんです!近年、JRAではルールを改正してレース前の飲水を解禁。そのほかの暑熱対策も功を奏し、気温が高い年も熱中症の競走馬の数は例年と同程度に抑えられているようです。

ミストシャワーの設置

ミストシャワーを浴びると、体表にミストが付くことで気化熱により効率的に体温が下がります。JRAの競馬場では、レースを終えた馬がすぐに涼むことができるように、パドックや厩舎の周辺など複数個所にミストシャワーを設置。厩務員さんの服が濡れているのが分かるほどのミストで、馬もしっかりと身体を冷やせているはずです。

レースの時間調整

JRAでは、ファンに今までどおりのレース数を楽しんでもらいながら馬や騎手の負担を軽減するために、新たにレース時間の調整を始めました。調整の有無は地域によって異なりますが、多くは第1レースの開始時間を早めたうえで、最も気温の上がる昼間に3時間ほどの休憩を設けるというものです。

これに伴い最終レースも従来よりも遅い開始となるため、レースの実施時間を「日の出から日没まで」としていた規定自体も削除したそうですよ。なお、この改定の少し前から夏季にはレース前のパドックの周回を減らすなどの対策も行われてきました。

ファンや騎手、それぞれの反応は?

JRAで行われた暑熱対策と馬の耐暑性

馬の健康を守り、また馬が全力を出せる環境を整えるための暑熱対策は、多くの競馬ファンや関係者から高評価を得ているようです。

ファンからは、馬の健康はもちろんレースやファンイベントが暑い時間を避けて行われることで、快適に観戦・参加できたという声が。馬の健康管理をする調教師・厩務員や騎手としても、真夏の体調管理やケアがしやすくなったといわれています。

馬の耐暑性

JRAで行われた暑熱対策と馬の耐暑性

馬は世界中のさまざまな環境下で飼育されていますが、もともと耐暑性が高い動物とはいえません。暑さと馬の身体について、汗と体温という2つの面から見てみましょう。

馬の汗と電解質

運動後に馬を水洗いすると、滴り落ちる水が白く濁ったようになっているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。この白いものが、馬の汗。馬は発汗量が非常に多い動物で、また汗にはたくさんの塩分が含まれています。

そのため、発汗により電解質バランスの崩れやすい点には注意が必要です。体内の水分や電解質が不足すると、筋肉のけいれんや脱力症状を起こすことがあります。

馬の体温調節機能

私たちの身近にいる犬や猫は汗をほとんどかかず、口呼吸などによって体温を下げようとしているといわれています。一方で、馬は上記のとおり非常に多くの汗をかく動物であり、体温の調節機能は犬や猫より優れているといえます。

しかし、日本のように夏に湿度が高くなる環境では、汗が気化しにくく体温調節の効率が下がりがち。その結果、体温が過剰に上昇して熱中症になってしまうことがあります。特に運動後は体温が上がりやすいタイミングなので、十分な暑熱対策やケアをしてあげましょう。

馬へのケア

JRAで行われた暑熱対策と馬の耐暑性

今回の記事の前半では、JRAで行われている環境的な暑熱対策についてお伝えしました。では、暑さの厳しい季節を乗り切るために直接してあげられるケアにはどのようなものがあるのでしょうか?

水分補給と電解質バランスの維持

たくさんの汗をかく馬たちにとって、水分補給はとても大切。そのため、夏場は馬房の水が無くなっていないか、汚くなっていないかこまめにチェックしておきましょう。また、運動後はすぐに水を飲めるタイミングを作ることも大切です。

そして、水分とともに失われた電解質の補充には、塩分のほか電解質サプリメントも役立ちますよ!飼料に混ぜてあげるほか、リンゴなど好きな香りの付いた電解質サプリメントを水に溶かしてあげるのも飲水が進むようです。ぜひ「あまり積極的に水を飲まないので心配…」という馬に試してみてはいかがでしょうか?

餌の調整

人間も夏バテをすると食欲が落ちますが、暑い時期には馬の消化器系にも負担がかかります。そのため、消化が良くエネルギーを多く含む飼料を与えることで、胃腸への負担を軽減しつつ必要な栄養を確保したいところですね。乗馬をしている方など、馬の飼料配合をする機会があれば、ぜひ栄養面からも暑さ対策をしてあげましょう。

体温を逃がすサポート

暑い時期は、なるべく午前中の早い時間や夕方以降に騎乗し、暑い時間は馬を日陰で休ませたほうが良いでしょう。乗馬クラブでは厩舎にエアコンまで設置することは難しいかもしれませんが、大きめの扇風機などを使用して馬房の風通しをよくしてあげたいですね。

また、騎乗後は馬装を可能な限り早く解いて、可能であれば丸洗いをすることでも体温を下げるサポートができます。丸洗いをするときは、心臓に遠い場所から徐々に水をかけて慣らしてから身体も洗ってあげましょう。

まとめ

馬は暑さの影響を受けやすいため、環境の整備やお手入れなど適切な対策が必要です。乗馬をしている方は、今回の記事も参考にしながら愛馬の暑さ対策をしっかりしていきましょう!馬に携わる機会が少ない方も、もし暑い時期に競馬をみかけたら、競争馬の暑熱対策についてちょっと思い出してみてくださいね。

新着記事