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女性の乗馬とファッションの歴史

もともとは軍人の訓練や貴族のたしなみとして広まった乗馬や馬術競技。そのため、最初から女性が現在のように男性と同じスタイルで乗馬を楽しんでいたわけではありませんでした。では、女性が乗馬を始めたころにはどのようなスタイルで騎乗をしていたのでしょうか。今回は乗馬ファッションの歴史をたどってみます。

ロングスカートで乗馬

女性の乗馬とファッションの歴史

貴族の女性がたしなみとして乗馬を楽しむようになった14世紀ごろ、女性の脚や脚の形をあらわにするファッションはご法度とされていました。そのため、女性はロングスカートを着て乗馬をしていたんです。上半身は男性用に仕立てられた乗馬服を着用し、脚が見えない程度の長さのスカートを着用しています。面白いのは、女性なのに上半身は男性のように着飾っているのに、下半身にはロングスカートを身に着けていたこと。そのため、男性の力を借りないと乗馬や下馬ができませんでした。貴族の女性であっても、まだ公私ともに常に男性のサポートを必要としていた証拠なのかもしれませんね。

横座りでの騎乗

女性の乗馬とファッションの歴史

ロングスカートで騎乗するため、馬をまたぐことはできません。では、どのように乗馬を楽しんでいたかと言うと、この時代の女性たちは横乗りをしていたんです!先述のとおり、騎乗には男性のサポートが必要であり、そのサポートを得る際の所作にも女性らしい美しい動きが求められていたそう。しかし、横乗りをする際の鞍やスカートにもどんどん改良が重ねられて、時代が進むごとに鞍やスカートの安全性にも顕著な変化がみられるようです。

また、女性の手綱さばきが男性のものと比べて、柔らかいことから、当時のイギリスの書籍には「女性が乗っている馬の方がおとなしい」と書いてあったそうです。横乗りによる落馬事故は現代の乗り手が想像するほどは多くなかったのかもしれませんね。しかし、日常生活ではあまりとらない不自然な体勢で馬に乗っていたイギリス貴族の女性たちは、慢性的な痛みを右ひざに抱えることも少なくなかったんだとか。またいで騎乗するのに慣れている私たちには横乗りなんて怖くて信じられませんね!思わず、筋肉も全然違うところが発達していたのかもしれないな、と想像をしてしまいました。

18世紀になると、男性の乗馬服のスタイルも残しつつ、女性が普段着るドレスの要素を取り込んだ女性用乗馬服「ローブアマゾネス」(アマゾネスは乗馬する女性の意味。ギリシャ神話に出てくる騎馬が得意な女性のみの部族アマゾーンが由来)が出てきます。また、19世紀後半になってくると、庶民にも乗馬が普及し始めますが、それでも女性の横乗りの文化に変化は見られませんでした。20世紀にはいると、乗馬用キュロットの上に巻きスカートを合わせるテイラーメイドの乗馬服が出てきます。この乗馬服の開発によって、女性用乗馬服の機能性が格段にアップして、女性にとっても乗馬がスポーツとして楽しまれるようになってきました。サイクリングなどのスポーツではパンツスタイルも一般的になってきた時代でしたが、乗馬では伝統を重視する傾向が強く、横乗りの文化に大きな変化は見られませんでした。

パンツスタイルとシャネルの関係

女性の乗馬とファッションの歴史

そこに風穴を開けたのが、CHANELの創業者であるガブリエル・シェネル(通称 ココ・シャネル)でした。シャネルは乗馬用キュロットを着用し、男性のように馬にまたがった初めての女性だと言われています。シャネルは、女性服ですらも男性目線で、女性が着たい服を着ることができない社会であることに疑問を持った前衛的な女性でした。そのため、男性と乗馬に出かける際にも、男性用の乗馬用キュロットを仕立てて騎乗していました。最初のころこそ、周囲にもびっくりされたようですが、シャネルが颯爽と馬にまたがる姿から徐々に女性からも憧れとされるようになっていったのだろうということは容易に想像ができますね。その後もシャネルは騎乗時だけでなく、あらゆるシチュエーションでパンツを着用するのを好んで、女性のパンツスタイルを世界中に広めていきます。その後のシャネルの活躍は言うまでもないですね。

しばらくして、女性が乗馬用キュロットを着用することが急速に広がっていき、横乗りは急激に衰退していきます。時は1930年代後半ごろ。女性の乗馬服が現在のようなスタイルになってから、まだ1世紀弱しかたっていないのは驚きです。最近はデザインや機能性だけでなく、安全性も重視されており、エアバッグ式のプロテクターが普及してきました。乗馬服は今も進化の途中なのかもしれませんね!

まとめ

いかがでしたか。今のように男性と同じスタイルで乗馬を楽しめるのは、自分の思う女性のあり方をファッションで表現してきたシャネルの信念のおかげなんですね。ロングスカートでの乗馬は女性にとってはもちろん、馬にとってもなかなかの負担だったのではないでしょうか。また、乗馬服は男性のファッションにも多くの影響を与えてきました。その時代の背景やうねりのようなものが、結果的に乗馬服の機能性をあげることにつながり、私たちが快適に乗馬を楽しめるようになったのです。先人たちに感謝します!

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