【ここをチェック!】馬が勝手に後ろに下がる時
馬のスピードを落としたり停止させたりしたいだけなのに「なぜか馬が後退してしまう!」という経験をしたことはないでしょうか?今回の記事では、指示していないつもりなのに馬が後退してしまう場合のチェックポイントと、騎乗者側ができる対応について解説します。
手綱を引く強さ
1つめのチェックポイントは、手綱を引く強さです。人間側は「スピードを落として」もしくは「止まって」と指示しているつもりでも、馬は必要以上に手綱による制限を感じているかもしれません。
必要以上に手綱を引いている可能性
馬はたしかに力の強い動物ですが、ハミが触れている口の周りは繊細で微妙な指示も感じることができます。そのため、強すぎる力で手綱を引かれると後ろに下がってしまうことがあります。
また、手綱を引く強さだけでなく、手綱を引いている時間の長さもチェック。一度引いただけで「止まれ」の指示は伝わっているにもかかわらず人間が手綱を引き続けると「止まろうと思ってたけど、もっと?後退するということ?」と馬が勘違いして後ろに下がってしまう場合もあります。
手綱にしがみつくのはNG!
ここまでは騎乗者が意図的に手綱を強く長く引いている場合について触れましたが、乗馬初心者の場合には意図せず手綱を引いてしまっている場合があります。
それは、バランスの崩れや速さへの恐怖心から無意識に手綱にしがみついてしまっているから。進むべきときにずっとしがみつかれていたら馬は辛いはずです。
そのうえで、人間が止まりたいと思ったときにさらに手綱を引かれたら、手綱を長く引いているときと同じく下がってしまう馬もいるでしょう。
脚の位置と圧迫の強さ
2つめのチェックポイントは脚です。位置が合っていないと、騎乗者のバランスが崩れる原因に。そして、意外と多くの人が「脚を入れる=進め」の指示だと勘違いしていることも馬が後退してしまう原因かもしれません。
脚が前方に行きすぎているかも?
馬上でのバランスが安定していない人は、脚が正しい位置よりも前に出がち。その理由としては「鐙をしっかり踏もう・かかとを下げようとして力が入ってしまう」というものがあります。
脚が前方に出てしまうと、自然と上半身は後ろに傾いてくるものです。その結果、上半身が過度に後傾してしまい、それにともなって手綱が後ろに引かれます。すると、手綱にしがみついている場合と同様に無意識に手綱を引っ張り過ぎてしまう可能性があります。
脚の圧迫=前進ではない
もう一つ大事なポイントは、脚で圧迫するのは「前に」動いてほしいときだけのサインではないということです。たとえば、意図的に馬を後退させる場合にも、これ以上前に行けないよう手綱を張った状態で脚を入れます。
つまり、脚とはあくまで「動いてね」というサイン。そのため「前へ」と指示を出したい場合には、馬が前進できる状態の手綱にしておくことが大切だと覚えておきましょう。これを意識するだけで、馬の動きもかなりスムーズになるはずです。
姿勢とバランス
3つめのチェックポイントは、姿勢と全身のバランス。姿勢やバランスが崩れていると、手綱のコントロールが難しくなるだけでなく馬に負荷がかかることになります。
背中が後ろに反っているかも?
前述のとおり、上半身が後傾するとと無意識に手綱を引きすぎて馬が後ろに下がりやすくなります。では、「横から見てかかと・坐骨・頭が一直線上に並ぶバランスが良い」と頭では分かっているのに後ろに傾きすぎてしまう原因はあるのでしょうか?
主な原因としては、さきほどの「脚が前に出すぎていること」のほかに「姿勢を過度に意識して腰が反っている」「馬のスピードを速いと感じるため無意識に後傾してしまう」などが考えられます。
鞍の上には静かに座ること
バランスよく馬に乗るうえでは、単に姿勢が良いだけでなく馬の負担にならないことも大切です。うまく体重移動をしたり、膝や股関節などで運動の衝撃を吸収できていれば、騎乗者としても反動を逃がすことができるため騎乗が楽になるでしょう。
こうした動きがうまくできていないと、馬の運動により騎乗者の身体は大きく跳ねたりズレたりします。この状態では騎乗者自身が辛いだけでなく、馬にも負担がかかります。この負担を強く感じると馬は落ち着いて運動することができず、止まるべきときにも後退してしまうといわれています。
理想的な対応方法は?
馬が後ろに下がってしまう原因は、複数あることが分かっていただけたでしょうか。最後に、こうした原因も踏まえて「後退してしまう馬への対応策」を紹介します!
馬に手綱を譲る時間を作る
私たちは「馬が勝手に後退する」と思いがちですが、馬から見れば人間が手綱を引き続けて「後退しなさい」と伝えているようなもの。そのため、上記のような扶助を出す場合にも、必要ないときには手綱を緩める(譲る)ことが後退対策になるでしょう。
馬が扶助を受けてから後退してしまうまでには、人間が指示したとおりにスピードを落としたり停止している瞬間があるはずです。馬の動きをしっかりと感じ、指示通りになったと感じた瞬間に手綱を譲ると、馬も「あ、これで正解なんだ」とそれ以上の動きを止めてくれるはずです。
自分の姿勢をチェック&修正
姿勢が崩れると手綱を必要以上に引いてしまったり、安定して鞍に座れず馬の負担になったりするため馬が後退しやすくなります。しかし「正しい姿勢をしよう」と意識するだけではなかなか正しい姿勢は身に付きません。
馬場の横に鏡が設置されている場合には騎乗中に姿勢を確認したり、レッスンの様子をビデオに撮って後で見るなど、実際に目で見て自分の姿勢を知ることが大切です。その上で、正しいとされる姿勢と見比べて、違っている部分があればレッスンのたびに修正を重ねていきましょう。
まとめ
特に初心者のうちは、指示していないつもりなのに馬がいきなり後ろに進むと、思わぬ急な動きに「どうして勝手に下がっていくの?」怖さを感じる方もいるでしょう。しかし、実は人間が原因を作っている場合も多いもの。もう一度、自分の扶助や姿勢をチェックして対策を考えてみましょう!