【コツをつかんで楽に乗ろう!】軽速歩の達人への近道
「軽速歩は楽な乗り方のはずなのに、すごく疲れる…。」とお悩みの方はいらっしゃいませんか?
初歩の段階で教わる軽速歩ですが、やってみると意外に難しく、なかなか楽に乗れるようにならないかもしれません。
でも大丈夫!馬の動きや人の身体の動かし方を理解して、馬と人の動きを合わせることができるようになれば、いつか必ずコツがつかめます。
今回は、軽速歩をマスターする近道についてご説明します。
馬の速歩の動きと軽速歩の手前
速歩は二拍子の運動。馬の前肢は右、左と交互に動き、同時に対角の後肢が左、右と動きます。
軽速歩の時に大切なのは、馬の動きを理解し、人の「立つ、座る」のタイミングを合わせること。内側の後肢が着地しているときに立ち、外側の後肢が着地しているときに座ります。
下の図は、馬が右手前(時計回り)の輪乗りで速歩しているところを上から見たものです。
右手前のときは、右側の後肢が着地しているとき、つまり右前肢が前に動いているときに立ちます。
馬の肩を見れば左右どちらが前に動いているか分かりますが、人の頭は重いので、頭を前に傾けてしまうと馬も人もバランスを崩してしまいます。頭や首の角度は変えずに、目だけで馬の動きを確認するようにしましょう。
手前が合っていないことに気付いたときは「立つ、座る、座る」と2回座れば大丈夫。
「斜めに手前を変え」「輪乗りの手前を変え」の号令がかかった場合も、斜線や輪乗りの中央で2回座って反対の手前に変えるようにします。
軽速歩のときの人の身体の動かし方
下の図は、軽速歩のときの人の姿勢を横から見たもの。
左側が座っているとき、右側が立っているときです。座っているときは、頭・お尻・かかとが横から見て一直線上にあります。
軽速歩で立つときのポイントです。
・お尻をわずかに浮かす:「ヨイショ!」とがんばって自力で立ち上がるのではなく、馬にポンポンと跳ね上げられる速歩の反動を利用して、わずかにお尻を浮かせるようにします。
・膝の角度は座っているときより少し大きくなる:膝を伸ばし切るのではなく、わずかにお尻を浮かせるのに伴って自然と角度が少しだけ広がります。
・膝下は動かさない:膝下は座っているときと同じ状態で、なるべく動かさないようにします。また、膝でしがみつかないよう、逆に膝下が外に広がってしまわないようにしましょう。
・鐙は真下に踏み下げる:足が前に突っ張らないよう、逆に後ろに流れて上半身が前に倒れないよう、真下に踏み下げます。
上半身の角度は変わらず、地面に対して垂直を保ちます。また、立ったときに馬の口を引っ張らないよう、こぶしの高さを一定に保つようにします。
軽速歩がうまくできない原因
軽速歩を楽に続けるには、人が前後左右バランス良く乗っていることと、身体の各パーツを自由に柔らかく使えていることが大切です。
軽速歩がうまくできないのは、次のような原因が考えられます。
・立つ方向が違う:脚が前に突っ張ると上半身が後ろに倒れてうまく立てず、馬の動きに遅れてしまいます。また、前に倒れてしまってもうまく立つことができません。真上に立ち上がると前に進んでいる馬の動きに遅れてしまうので、おへそを自分のこぶしに近付けるつもりで、少しだけ前にお腹を動かします。
・鐙を真下に踏み下げていない:自分の体重を鎧で支えられないと、鞍にドスンと着地してしまったり、2回尻餅をついてしまったりします。また、手綱でバランスを取ろうとすると、馬が口を引っ張られて前に進みたがらなくなってしまうかも。鐙を真下に踏み下げて、バランス良く自分の体重を支えるようにしましょう。
・力んで一生懸命立ち上がっている:「立ち上がらなければ!」と膝がまっすぐに伸び切るまで立ち上がっていると、体力を消耗してしまいます。馬の反動を上手に利用して、省エネモードで楽に乗りましょう。
・鐙革の長さが合っていない:鐙革の長さが長過ぎても、短過ぎても、軽速歩は大変。また、左右の長さが違えばなおさらです。馬に乗る前に長さをよく確認し、乗り始めてから調整したい場合はレッスンの指導をしているスタッフに声をかけて直すようにしましょう。
・馬の動きと合っていない:立つ・座るのタイミングが馬の動きと合わないと、お餅つきのようにポンポンと跳ね続けてしまって大変!馬の動きを感じて、正しいタイミングをつかみましょう。また、馬が前に進む動きに遅れないようについていきましょう。
軽速歩の練習方法
軽速歩で立つ感覚を身につけるための練習方法です。バランスを崩して鞍に尻餅をつくと馬がびっくりしてしまうので気を付けましょう。また、レッスンの指導者に相談してから練習するようにしましょう。
ステップ1
馬が停止している状態で鐙を真下に踏み下げ、10秒間お尻を浮かせます。バランスが保てない場合は前鞍の部分を持って体を支えましょう。手綱は絶対に引っ張らないように!
ステップ2
ステップ1ができるようになったら、常歩をしている馬の上で同じようにお尻を浮かせてみます。膝でしがみつかないように、鐙を真下に踏み下げてバランスをとります。
ステップ3
ステップ2ができるようになったら、速歩をしている馬の上でお尻を浮かせたままバランスをとります。足首の関節は柔らかく保ち、馬の反動をかかとへ逃すようにしましょう。
ステップ4
「立つ、立つ、座る」「立つ、座る、座る」など、軽速歩のリズムを変えてみましょう。バランス感覚が向上し、脚が安定するようになります。
ステップ5
ここまでクリアできたら、普通に軽速歩をしてみましょう。きっと今までよりも楽にできるようになっているはずです。
自宅でできる練習
玄関や階段の1段目など、危険がない高さの段差に足指の付け根で立ちます。背後に転倒しないよう、壁などで必ず身体を支えてください。可能であれば、足は馬に乗っている状態と同じくらい広げます。
鐙を踏んでいるときのようにかかとを下げ、頭・お尻・かかとを一直線にします。
この状態でバランスを取ることができたら、膝下を動かさずに少しだけおへそを斜め前に動かすイメージで軽速歩の動きを練習してみましょう。
股関節、膝、足首の関節の使い方がわかりやすく、足指の付け根でバランスを取る練習になります。
まとめ
軽速歩は、馬のウォーミングアップやクーリングダウンにとても有効。また、急いでしまう馬のテンポを手綱なしで調整できる大切な手段でもあります。
上手に軽速歩ができるようになれば、人が楽なだけでなく、馬の背中を柔らかく大きく動かすことも可能に。
軽速歩のコツをつかんでマスターすれば、ステップアップ間違いなしですよ!