【日本ではあまり馴染みがないかも?】軽乗について
馬に乗る競技などで一般的に認知度が高いのは、乗馬や競馬といったところではないでしょうか。パリオリンピックでの活躍もあり、最近は馬術も広く知られてきましたね。
では「軽乗」はどうでしょう。軽乗とは動いている馬の背の上で体操やダンスを行うもの。日本では見かけることが少なくあまり馴染みがないかもしれませんが、曲芸にも似たダイナミックな動きにはつい目を奪われてしまいます。
エンターテイメント性の高い競技なので、今年開催されたJRA栗東トレーニング・センター「馬に親しむ日2024」や馬事公苑「第49回 愛馬の日」でもイベントとして軽乗が取り入れられていました。
初めて聞いたという方も、競技名は聞いたことがあるけどよく知らないという方も、軽乗のあれこれについてちょっとのぞいていきませんか。
軽乗の概要
乗馬にはブリティッシュやウエスタン、障害飛越や馬場馬術など様々な種類があり、「軽乗」はその内のひとつ。国際馬術連盟が認定している馬術競技で、ヨーロッパでは盛んに競技会が開催されています。1度だけですが、1920年のアントワープオリンピックで採用されたこともあるんですよ。
フィールドの中央には馬を繋いだランジライン(ロープ)を持つランガーという人を置き、馬はランジラインによってコントロールされ、ランガーの周りを直径13m以上の円を描くように動きます。
軽乗において馬に乗せるのは一般的な鞍ではなく、腰のあたりまである広いクッションと、その上にハンドルが付いた腹帯。
その馬上で騎乗者が両手を離して乗ったり、立って乗ったり、後ろ向きに乗ったり、逆立ちをしたりと、アクロバティックな動きを見せるのです。時には2人乗り、3人乗りをすることもありますし、馬の走るリズムに合わせて代わる代わる飛び乗ったり飛び降りたりすることもあります。
競技は個人、ペア、チームと3種類に分かれていて、さらにレベルに合わせたカテゴリー分けがされ、演技の内容が変わります。馬も競技レベルに合わせて常歩(なみあし:歩く)、速歩(はやあし:早く歩く)、駈歩(かけあし:走る)と歩法を変えていきます。
軽乗の馬は競技レベルによって歩法を変えるだけではなく、人を背中に乗せるのはもちろん、走ってくる人や跳び乗ってくる人、背中で立つ人、背中で寝転ぶ人などに慣れなくてはいけません。さらに騎乗者のアクロバティックな動きを負担に感じないよう、柔らかく強い身体を作るトレーニングも必要になります。
このように馬、騎乗者ともにかなり高度な技術が求められる競技であり、それ故に観客を魅了する迫力を兼ね備えているのかもしれませんね。
ルール
軽乗は国際馬術連盟認定競技なのでルールもきちんと設定されています。公認競技会以外では大会ごとにルールが大きく違う場合もありますが、ここで基本的なルールの説明をしていきましょう。
決められた技の組み合わせでレベル分けされる「規定演技」、自分で選んだ音楽にフリーで合わせる「自由演技」が主なもの。
そして採点の要素に馬への配点が25%あるのがユニークなところです。
個人(インディビジュアル)
規定演技(制限時間なし)と自由演技(制限時間1分間)で1セット。
上級者のみ、規定の5種類の演技の中から3種類選び、それ以外を自由演技とする「テクニカル」という演技が加わります。
乗馬競技には珍しく、個人競技は男女別で行われます。
ペア(パ・ド・ドゥ)
男女ペアで行う自由演技。制限時間はレベルによって90秒間と2分間と分かれます。
最上位カテゴリーのみ、各人それぞれが連続して規定演技(制限時間なし)も行います。
チーム(スクアッド)
6人でチームを構成。馬上には同時に3人までと決まっていて、規定演技と自由演技を1セットとして演技をします。
3段階のレベル分けされた規定演技(制限時間6分間)を1番と2番が行い、自由演技(制限時間4分間)はレベルにより2種類に分かれています。
見どころ
やはり見どころと言えば、命綱も手綱もなく体だけでバランスを取りながら繰り出される技の数々でしょう。
一見シンプルに見えてしまう手放し騎乗も相当なもの。それどころか技を披露する以前に、動いている馬に飛び乗ることさえかなり難しいことです。
そんな状況下において馬上でジャンプをしたり倒立をしたりと、まさにサーカスを見ているような興奮と感動を覚えずにはいられません。
ついつい騎乗者の華やかな動きに目を奪われがちですが、競技の間ずっと動き続けている馬も驚異的です。特に上級者レベルの大会では絶えず駈足をしつつ、背中の上を人が乗ったり降りたりしても同じリズム、速度、歩度を維持する集中力や忍耐力は称賛に値します。
そして安定したペースで馬をコントロールするランガーも忘れてはいけない存在。
馬、騎乗者、ランガーとそれぞれ素晴らしいレベルにあることが、競技のクオリティを引き上げる重要なファクターであり、また競技の安全性も引き上げるのでしょう。
まとめ
軽乗について、少し興味を持ってもらえたでしょうか。
百聞は一見に如かず。軽乗は実際に見るのが1番なので、イベント等をみつけたら是非行ってみてくださいね。