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【最も過酷な競技かも】総合馬術競技

今年のパリ・オリンピックでは、馬術競技が7月26日から8月6日まで行われます。この記事ではその中でも、「馬術のトライアスロン」と言われる総合馬術競技について取り上げます。馬好きや乗馬愛好家なら観ているだけでも楽しめる総合馬術競技ですが、さらに楽しめるようにルールや審査ポイントについて、ご紹介します。

競技内容

【最も過酷な競技かも】総合馬術競技

総合馬術競技は馬場馬術競技、クロスカントリー競技、障害馬術競技を3日間で実施し、減点の最も少ない人馬が優勝します。3日間、同じ人馬のペアで競技に臨まなくてはならず、馬のコンディショニングが難しい競技です。3日目の障害馬術競技の前には、獣医師による馬のコンディションの審査があり、これをパスしないと最終日は競技できません。パートナーに負担をかけすぎずないようにしながらも、どうやって減点を少なくしていくのか、ライダーは作戦を考えながら競技を進めていかなくてはなりません。パートナーを組む馬によって、競技の得意不得意もあるため、その馬に合った作戦を立てることがコンディションを維持する上でも重要です。心身両面において、とても過酷な競技ですが、それもそのはず、軍人の訓練がベースになっている競技なんです。

2020年の東京オリンピックでは、日本中央競馬会(JRA)所属の戸本一真選手とヴィンシーJRA号が4位に入賞しました。今年のパリ・オリンピックも楽しみですね!総合馬術の生まれ故郷のフランスで是非、メダルを期待したいです。

審査ポイント

それでは、各競技の審査ポイントを1日目の馬場馬術から細かくみていきましょう。

馬場馬術競技

【最も過酷な競技かも】総合馬術競技

初日の馬場馬術は調教審査です。翌日に大一番のクロスカントリーを控えているので、きちんと調教ができているかを審査します。馬のリズム、柔軟性、バランスやライダーに対する従順さなどが評価の基準です。20m×60mの馬場で規定演技を披露し、審査員が得点率を算出。ただし、総合馬術は減点法のため、100から得点率を引いたものを減点として扱います。

クロスカントリー競技

【最も過酷な競技かも】総合馬術競技

耐久審査のクロスカントリーは総合競技のみでしか見られない競技です。屋外のコースに自然に見立てた障害物を置いたコースを人馬が走破します。約6キロにもおよぶコースには、高さ80cm~120cmの40以上もの障害がコースデザイナーによって設置されます。なかには飛び降りるタイプの障害や水の中に設置された障害も。自然物を模した強固な障害を飛越するには、飛越にはライダーと馬との信頼関係が必要不可欠。規定タイムも決められており、世界のトップライダーが集まるクラスでは570m/分ものスピードで走り抜けなくてはなりません。

クロスカントリーでの減点は以下のとおりです。

【障害における拒止・逃避・巻き乗り】

– 拒止・逃避・巻き乗り 減点20

– 同じ障害における2回目の拒止・逃避・巻き乗り 減点40

– 3回目の拒止・逃避・巻き乗り 失権

【規定タイムの超過】1秒超過ごとに0.4の減点 規定タイムの2倍以上超過した場合は失権

【落馬・人馬転倒】失権

障害馬術競技

【最も過酷な競技かも】総合馬術競技

障害馬術は余力審査とも言われています。ある程度のスピードを保ちながら、500m~700mのコースに置かれた障害を経路順に飛越し、落とさずに回ってきた人馬が上位にくる競技です。馬の得手不得手を考慮して、スピードを上げて飛越していくのか、スピードは落としながらも落とさないように確実にジャンプするのか、ライダーの緻密な作戦が求められます。

障害馬術での減点は以下のとおりです。

【障害物の落下】減点4

【不従順(拒止、逃避、反抗)】  1回目は減点4 2回目は失権

【規定タイムの超過】1秒超過ごとに0.4点の減点

【落馬・人馬転倒】失権

見どころ

【最も過酷な競技かも】総合馬術競技

この競技の見どころは何と言っても、2日目のクロスカントリー。クロスカントリー競技では、コースの一部にダイレクトルートとロングルートの2ルートが設置されます。どちらのルートを通るかはライダーに委ねられています。障害の難易度は高いけれど、タイムを短縮できるダイレクトルートに挑戦をするのか、距離を稼いでしまうけれど障害の難易度が低めのロングコースを選ぶのかを選択しなければなりません。毎回、ロングルートを回っていると、規定タイムをオーバーして減点される可能性があります。一方でダイレクトルートの難しい障害を飛ぼうとして落馬したら失権です。馬の特性を考えて、ライダーが適宜、選択をします。

また、コースの途中で、障害と障害の間隔が長く空けられているところもありますが、飛ばしすぎてしまうと馬が疲れてしまい、途中棄権になってしまうことも。さらに、翌日の獣医師によるコンディション審査のことも考えながら、ライダーが速度をうまくコントロールをしなくてはなりません。しかし、速度を抑えすぎてしまってもタイム超過のペナルティーが科せられます。このように、適切な作戦を立てるには、馬のコンディションや性格もよく把握していなくてはなりません。ライダーにとっては、取捨選択の連続ですし、馬にとっては挑戦の連続。心身ともに非常にタフなレースです。

どうしても参戦している人馬に注目してしまいますが、馬のコンディションのサポート役などたくさんのスタッフに支えられており、どのチームも一丸となって勝利を目指しています。

まとめ

総合馬術競技は、人馬の持っているものを全て投入しても完走できるか分からないほど過酷なレースです。それゆえ、馬術のトライアスロンだと言われています。特にクロスカントリーで固定されている大きな障害を飛んでいく人馬には見ている人に勇気を与えるほどの迫力があります。パリ・オリンピックで挑戦を続けていく人馬に声援を送りましょう!

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