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妊娠中の母馬について

乗馬クラブで仔馬が生まれることは少なく、乗馬をやっていても妊娠中の馬を世話したり出産に立ち会う機会は少ないでしょう。今回の記事では、妊娠中・出産前の母馬にどのような変化がみられるのか、一度の出産で生まれる仔馬の頭数などについて解説します。

体の変化

妊娠中の母馬について

妊娠といえば「おなかが大きくなってくる」というイメージがありますね。しかし、母馬の身体に起こる変化はそれだけではありません。まずは、時期ごとにどのような変化が起こるのか代表的な変化をみていきましょう。

妊娠250日~(妊娠後期)

馬の妊娠期間は人間よりも2カ月ほど長く、330日間ほどです。そのなかで250日目以降が「妊娠後期」とされ、この頃になると母馬の身体にもさまざまな変化が現れます。

しかし、この頃の変化には個体差もあり、明確に「何週目でこのような変化がある」とはいえません。出産に関わる人たちは、母馬の変化を日々確認しながら体調不良の兆候がないか、出産はいつごろになるかなどを考えながらお世話をしています。

分娩2~3週前

分娩2~3週前になると、母馬の乳腺が発達するタイミングとなります。通常、馬はメスであっても乳房は目立ちませんが、この時期には乳房が大きくなり見た目にも分かるようになります。

個体により多少の時期のズレはありますが、早すぎる時期に乳房が膨らんできた場合には要注意。胎盤炎を起こしている可能性などもあるため、医師が診察し抗生剤などで治療します。

胎盤炎は流産の大きな原因の一つなので、妊娠継続のためには小さな徴候を見逃さず早めに対処することが重要です。

分娩1~2日前

分娩が近付くと、母乳が少しずつ分泌されるようになります。出産の1~2日前になると乳頭部に乳白色のヤニがみられるようになるのは、分泌された母乳が乳頭で固まっているためです。

乳房にこのような兆候が見られたら、いつ出産が始まっても良いように必要な物品をそろえたり、馬房内の環境を整えたりなどの準備をします。

この頃になると、母馬の産道周辺の靱帯が緩み外陰部が通常よりも縦に伸びたように見えるなどの変化が確認できます。また、さらに分娩が近付くと子馬は出てくる準備として身体の向きを変えます。

さらに出産が近付くと、仰向けだった仔馬がお腹のなかでうつぶせの状態になるため、ときには仔馬の脚の凹凸が母馬のおなかごしに見えることもあります。

ちなみに、馬は他の動物と比較すると胎動の多い動物だそうです。実際の理由は分かっていませんが、生まれてすぐに立ち上がったり移動する必要がある草食動物なので、お腹のなかで既に身体を動かしているのだともいわれています。

行動の変化

妊娠中の母馬について

分娩の数時間前になると最初の陣痛が起きるため、母馬も自分の身体の変化に気付いて普段とは違う行動を取ることがあります。陣痛が起こると、母馬はどのような行動を見せるのでしょうか?

落ち着きが無くなる

最初の陣痛は、出産間近の陣痛よりも痛みが弱いといわれています。それでも、母馬は普段よりも頻繁に寝起きを繰り返したり、馬房内をウロウロと歩き回ったりするなど落ち着きがなくなります

また、少しの音や動きにも反応するなど、神経質な様子をみせることが多いでしょう。個体により差はありますが、あくびをしたり上唇をひっくり返してフレーメンを行ったりする母馬もいます。

腹部の違和感を訴える

腹部に痛みや違和感をおぼえた母馬は、疝痛を起こした馬と似た仕草をして腹部の痛みを訴えます。最もよくみられる仕草は、前掻きです。また、腹部を見て気にするような動作や、横腹に軽く噛みつくような動作がみられることもあります。

他には、落ち着かない様子で尾を上げたり、尻尾をバサバサと振っているときも陣痛を感じていると言われています。

その他の変化

その他には、普段ならば食べきっている時間にエサを残していたり、食いつきが悪いなど食欲の低下がみられることがあります。また、通常よりも頻繁に少量の排便・排尿を繰り返すのも陣痛が来ている徴候です。

一回の出産で産まれる頭数

妊娠中の母馬について

基本的には、一回の出産で生まれる仔馬は一頭です。胎内で母馬から送られる栄養分も一頭分ほどのようで、たとえ妊娠した時点では双子だったとしても多くの場合には栄養不足等の理由から無事に育つことができません。

馬の出生時の体重は50~60kgほどあるので、その身体を維持するためにはたくさんの栄養が必要ということですね。

しかし、ごくまれに双子の子馬が二頭とも無事に生まれることがあります。馬に双子が生まれる確率は、1000回の出産に1回ほどなのだとか。

外国では双子として生まれた二頭がいずれも競走馬として活躍したというエピソードもあるので、無事に生まれるところまでたどり着けば成長や体格には大きな影響はないようですね。

ちなみに、子馬とはいえ人間の赤ちゃんと比較すると身体は非常に大きいもの。体重だけで言えば、人間の大人と同じくらいありますよね。もし双子だった場合、母馬は大丈夫なの?と心配になる方もいるのではないでしょうか。

しかし、少し体格の大きな母馬については出産する瞬間まで双子だと気付かれないこともあるのだとか。一人っ子だと思って出産に立ち会ったのに双子だったら、きっと厩舎の人たちもビックリですね。

まとめ

妊娠中の母馬の身体には、妊娠の週数ごとにさまざまな変化が現れます。馬の出産に関わる人たちは、どのような変化がいつ訪れるか知ることで出産までの時間を推測して必要な対応をしてきました。みなさんも、もし妊娠中の馬に出会うチャンスがあったら、普段見ている馬と違う様子があるかな?と観察してみるのも良いかもしれません。

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