【読めそうで読めない?】「馬」を用いた難読漢字
馬に興味を持ったり、馬との関わりが深くなったりすると、日常生活の中でパッと目についた「馬」という漢字にまでも敏感に反応してしまうことはありませんか?
馬は古来より人間にとって大切な動物とされてきました。
フランスにある旧石器時代のラスコー洞窟では馬の壁画が今もなお残っていますし、遺物として轡(くつわ)が発見されたことにより、人々は紀元前4000年頃から馬を家畜としていたことが分かっています。
紀元前3500年頃には馬車が発明され、紀元前2000年以降に馬車が普及し始めると、陸運や軍隊の主力、耕作のためと広く重宝されるようになりました。
このように人々の生活と密接な関係を持つ馬ですが、その重要性から漢字に組み込まれることもしばしば。
その中には「馬」を用いた難読漢字がいくつかあります。
今回は難易度ごとに3つ紹介しますので、豆知識として楽しんでみてください。
レベル1:馬鈴薯
こちらは「じゃがいも」ですね。
スーパーでよく見かける野菜ですし、食事でもおやつでも大活躍。知っていた方も多いのではないでしょうか。
一般的には平仮名の「じゃがいも」またはカタカナの「ジャガイモ」と表記されることがほとんどですが、行政などでは中国の植物名であるこの「馬鈴薯」という表記がよく使われています。
フランスではビタミン類が豊富ということで「大地のりんご」なんて呼ばれているそうですよ。
さて、では何故じゃがいもに「馬」が入っているのか?
一説ではじゃがいもの形が馬につける鈴(馬鈴)に似ていることからこの名前になったと言われています。
ちなみにじゃがいもは世界で3番目に多く消費されている食用作物。何十億もの人々が日常的にじゃがいもを食べていることから、国連総会において5月30日を「国際ポテト・デー」とすることが決定しました。
2024年5月30日は記念すべき最初の国際ポテト・デーとなっています。
レベル2:馬穴
こちらも割と親しみのある「バケツ」です。
お掃除の時にあると便利ですし、何より騎乗後の馬のお世話や馬に水を与える時などに用いるお馴染みのアイテムですね。
語源は英語の「bucket」に由来し、当て字を多用したことで有名な小説家の夏目漱石も使用していました。
「放浪記」で知られる林芙美子も「風琴と魚の町」や「魚の序文」などの小説の中でバケツを馬穴と表記しています。
昔は馬のお尻に桶をあてて糞を肥料として使っていたという説もあり、「馬尻」と字を当てる場合も。
レベル3:馬酔木
こちらの読み方は「あせび」。
あせびとはツツジ科アセビ属に属する常緑性の低木で、学名のPieris japonica(ピエリス ジャポニカ)から分かるように日本の固有種です。
春には鈴なりに白やピンクの可愛らしい釣鐘型の花を咲かせ、古くは万葉集に登場するなど日本では昔から親しまれてきました。
また「あせびの花」は春の季語として俳句や連歌を彩ります。
虫がつかないことから庭木や公園樹など観賞用に植栽されることも多くあり、わたしたちの身近にある花と言えるでしょう。
しかしグラヤノトキシンI(旧名アセボトキシン)やクエルセチンなどの有毒成分が含まれ、馬が食べれば毒に当たって苦しみ、酔っ払ったようにふらふらとした足取りになるというところから、この漢字表記になったとの説があります。
アセビの花言葉は「犠牲」「献身」「清純な心」「あなたと二人で旅をしましょう」。
そして「危険」という花言葉も持っています。
これはもちろん、あせびの強い毒性からくるものです。
その葉を煎じれば自然由来の農薬、害虫退治用の殺虫剤として利用されるほど。
馬だけじゃなく、わたしたちにも有害なので気をつけましょうね。
まとめ
そもそも「馬」という漢字は、絵文字から発展したと言われる物のかたちを点や線でかたどった象形文字。漢字そのものが馬という動物を模して作られているのです。
大まかに言うと、上の横線が”たてがみ”、下の点が”脚”を表現しています。
そう思うとなんだか愛着がわいてきますね。
馬という文字が使われた漢字はたくさんあるので、時間がある時に辞書を引いてみると楽しいですよ。