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競馬場で流れる「ファンファーレ」

競馬のレース出走前に響くファンファーレには心が躍ります。何となく聞き流してしまう方も多いと思いますが、競馬場やレースごとに種類が違うため、ファンファーレを聞くとどこのレースが出走になるのか、一目ならぬ一聞で把握できる便利なものでもあります。実はテレビの競馬中継で、現場のアナウンスでは発走のタイミングが視聴者になかなか伝わらなかったことから、音楽を鳴らしたのが由来だと言われています。それをJRAが導入し、1987年ごろから現在使われているのファンファーレを使用し始めました。海外競馬で発走を知らせるためのファンファーレはあまり耳にすることがなく、日本競馬で発展した独自の文化だと言えます。今回はこのファンファーレの秘密に迫ってみます。

ファンファーレの種類

競馬場で流れる「ファンファーレ」

日本中央競馬会(JRA)では、競馬場や競走の種類によってファンファーレを分けています。競馬場別では、「函館・札幌」、「福島・新潟」、「東京・中山」、「京都・阪神」、「小倉・中京」のものが準備されています。また、一般レース、特別レース、重賞レースのレースの種類によっても使い分けられています。GⅠレースについては、関東(東京・中山)と関西(京都・阪神・中京)で別々のものを使用し、障害レースは、「J・G1用」とそれ以外の競走用のファンファーレがあります。また宝塚記念では宝塚記念専用、名鉄杯では名鉄杯専用のファンファーレがあります。合計21曲

長年の競馬ファンはファンファーレを聞いただけで、どこの競馬場のどんなレースが始まるのかが分かるので、とても便利です。おそらく、それぞれのファンファーレに、思い出の名レースや名馬の姿を思い浮かべることができるファンも多いのではないでしょうか。筆者は函館と札幌のファンファーレを耳にすると、「今年も夏が来たな」と感じます。

地方競馬(NAR)の競馬場にも多種多様のファンファーレがあります。芝とダートのレースでファンファーレを変えている競馬場もあれば、JBC競走専用のファンファーレもあるんですよ。昔のファンファーレが流れるとその時代の思い出がよみがえるファンも多いようで、昔使っていたファンファーレを特別に使用するイベントを行うこともあります。それくらい、ファンファーレはファンにとってもなじみのあるものなんですね。

演奏しているのは誰?

競馬場で流れる「ファンファーレ」

普段、競馬場で流れているのは録音された音源ですが、大きなレースになると生でファンファーレが演奏されることもよくあります。

JRAのNHKマイルカップでは毎年、NHK交響楽団がファンファーレを演奏します。ファンファーレの演奏は1音目からしっかりと音を出していかないとならず、難易度は高め。そのため、全員が演奏できるわけではなく、選抜メンバーによる演奏だそうです。のびやかであり、安定した音色に聞き入ってしまうファンは多いはず。

名鉄杯のファンファーレは、名鉄ブラスバンド部による演奏が行われます。

他には自衛隊の音楽隊や新日本フィルハーモニー、多くのコンクールで受賞をしているアマチュア吹奏楽団の光ウィンドオーケストラ、地元の大学や楽団による演奏があります。

変わり種として、過去にはジャズ風にアレンジされたファンファーレや尺八による演奏、コーラスでの演奏もありました。

ファンファーレの生演奏のある日はお昼に演奏会があることも。競馬と演奏会を一度に楽しめます。興味のある方は、生演奏を一度は聞いてみてくださいね。ファンファーレの生演奏のある日は、JRAのホームページから各競馬場のイベントをチェックしてください。

作曲者はすごい人ばかり!

競馬場で流れる「ファンファーレ」

JRAのファンファーレを作曲されたのはどんな方なのかみていきましょう。ファンファーレの作曲者は、80年代には、すでに大活躍をされていた皆さんで、そうそうたるメンバーなんですよ。

「東京・中山」用ファンファーレや関東G1競走用ファンファーレを作曲したのは、すぎやまこういちさん。G1のファンファーレは5拍子でかなり難しいものだそうです。関東のG1競走の本馬場入場に使われていた「グレード・エクウス・マーチ」もすぎやまさんの作品。すぎやまさんは「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽を担当しました。あまりにも有名な「序曲」はなんと5分で作曲した作品なんだとか。そのほかにも「恋のフーガ」や「亜麻色の髪の乙女」も手がけた日本を代表する作曲家です。すぎやまさんは競馬が大好きだったそうですよ。

「京都・阪神」用ファンファーレと関西G1競走用のファンファーレを作曲したのは、宮川泰(ひろし)さんです。宮川さんも「恋のバカンス」や「宇宙戦艦ヤマト」などの楽曲を手がけ、大きな功績を残した作曲家です。すぎやまさんが作曲した「恋のフーガ」は宮川さんの編曲を経て、大ヒットを記録しました。

「小倉・中京」用ファンファーレの作曲家は川口真さん。大学在学中に編曲家としてデビューし、のちに作曲家としてもキャリアを積みます。「ウルトラマンタロウ」やスナック菓子・カールのCMソングを作曲したほか、ピンク・レディー、アグネス・チャン、尾崎紀世彦など名だたる歌手に楽曲を提供した作曲家です。山口百恵の「いい日旅立ち」などの編曲も手がけました。

「福島・新潟」用ファンファーレを作曲したのは服部克久さん。テレビ草創期の戦後から、テレビや映画、アニメの楽曲を担当し、CMソングや大学の学歌まで幅広い分野で活躍しました。「クイズ100人に聞きました」や「ザ・ベストテン」のオープニングテーマを作曲。編曲でも竹内まりや、さだまさしなど日本のトップ歌手の楽曲を担当しました。

「函館・札幌」用ファンファーレを作曲したのは鷺巣詩郎(さぎす・しろう)さん。関西のG1競走の本馬場入場に使われていた「ザ・チャンピオン」も鷺巣さんの作品です。作曲や編曲だけではなく、音楽家の発掘や海外でクラブを経営するなど、音楽界を多方面からリードしています。映画やアニメの音楽も多く担当され、中でも庵野英明監督とタッグはおなじみ。エヴァンゲリオン、シン・ゴジラや進撃の巨人の音楽を担当し、第一線で活躍をなさっています。

障害競走用ファンファーレを作曲したのは三枝成彰(しげあき)さん。映画「優駿」の音楽も手がけた作曲家です。作曲家モーツァルトの研究やコレクション収集を行う国際モーツァルテウム財団からの依頼で、モーツァルトの未完曲に補筆し、完成させたこともある世界に活躍の場を広げている作曲家です。近年はオペラ作曲に注力されていますが、テレビ番組のBGMや校歌なども多く作曲されており、活躍は多岐にわたります。

ちなみに宝塚記念のファンファーレは1999年に公募で採用された早川太海さんによる作曲。全人馬の無事を祈って書き上げたそうです。早川さんは作曲家として活躍されています。名鉄杯のファンファーレは、名古屋鉄道の特急車両で使用されているミュージックホーンをアレンジしたもの。ミュージックホーンは電車の通過時に警告するために搭載されたのだそうです。

まとめ

いかがでしたか。今回は主にJRAで使用されているファンファーレについて深掘りしました。機会があれば、ぜひ競馬場で生のファンファーレをお楽しみいただければと思います。

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