【馬にも必要!】馬の健康手帳

わたし達の健康情報管理にマイナ保険証やおくすり手帳があるように、馬にも「健康手帳」があるのをご存じですか?正式名称は「馬の検査、注射、薬浴、投薬証明手帳」。馬の健康手帳…中々思い至らないものですが、言われてみると繊細に健康管理がされている馬達には、確かに存在して然るべきものですよね。今回は馬の健康手帳がどのようなものなのか調べてみました。
何故必要なの?

健康手帳には馬の出生情報から記録が始まり、馬体の特徴、ワクチン接種や検査、移動の履歴が記されています。防疫上重要な情報の他、個体識別に必要な情報も記載するようになっていて、馬が移動する際には必ず携帯します。
馬は集団で管理され伝染病が流行しやすい環境にあるので、万が一、馬インフルエンザなどの伝染病が発生した場合、これがあることによって速やかな対処ができるのです。
個体識別は勿論、移動履歴の記録は感染経路の追跡や病気のまん延防止に繋がりますし、予防接種の履歴からは免疫の維持の確認ができます。検査の履歴は病気の早期発見や集団感染の防止に役立ち、ケガや投薬の履歴によって獣医とのスムーズな情報共有が可能となります。馬を売買する時や競技会、競走馬が引退して乗馬馬になる時など、馬の健康を示す証明にも。
このように馬の健康を保つ為、また恐ろしい伝染病の予防体制を維持する為に必要不可欠なものなのです。
また余談ですが個体識別といえば、2025年9月に競走馬の取り違えが発生しました。競馬場の装鞍所でマイクロチップを含めた馬体照合をしたところ、出走予定の馬ではなかったことが判明。もちろん出走取消となりましたが、その日の出走予定馬はというと、取り違えられた馬としてトレーニングセンターで調教を受けていたということです。あわや適切ではないレースを回避できたのもマイクロチップでの個体識別が成されていたからこそですね。
馬には個性があると言ってもたくさんの馬が集まる中では、このようなことは起こり得る事態。
競走馬に関していうと日本では個体識別に2007年産駒からマイクロチップ導入が義務化されていて、マイクロチップが埋め込まれていない馬は日本国内でレースに出走できないようになっています。
記載事項は?

・予防接種実施の情報
ワクチン接種を実施した獣医師により、接種年月日、ワクチンメーカー名及び製造番号、獣医師名及び所属などを記入
・馬の移動の情報
移動元の管理者により、移動年月日、移動元、移動先、記入者名及び所属などを記入
(競馬場や調教施設等への往復、種付けやセリ等に関する往復、馬術競技会や馬事イベント等に関する往復、または移動歴が把握できる往復に関しては記入省略可)
・伝染性疾病の自衛検査実施の情報
家畜伝染病予防法で義務付けられている定期検査の他に行った自主的な馬伝染性貧血検査や、馬インフルエンザの簡易検査などの自衛検査を実施した場合、検査を実施した獣医師により、検査年月日、検査内容及び方法、判定結果、獣医師名及び所属などを記入
・睾丸摘出術(去勢)実施の情報
睾丸摘出術を実施した獣医師により、実施年月日、実施場所、獣医師名及び獣医師番号などを記入
① 両側の睾丸を摘出(去勢)した場合、性別が「牡」から「セン」に変更となるので、去勢証明書を管理者(調教師等)に提出し、複写を健康手帳に添付
② 片側の睾丸だけを摘出した場合、左右の欄にそれぞれ必要事項を記入(片側だけでも睾丸が残っている場合、性別は「牡」のまま)
・特定の医薬品の投与情報
省令で使用が規制されている特定の医薬品を投与した場合、投与した獣医師により、使用年月日、使用動物医薬品又は使用医薬品名、獣医師名及び所属などを記入
(特定の薬物を投与した場合は、所有者に対してその動物を食用として出荷してはならない旨を出荷禁止指示書により指示することが必要)
・重大な病気の発症履歴
治療した際に薬物ショックを発症した場合など、生涯にわたって情報を共有すべき重大な事項があると判断した獣医師は、「重要事項記載欄」に必要事項を記入
パスポートを持っている馬も

馬の健康手帳も意外だったかもしれませんが、実はパスポートを持っている馬もいます。先のパリオリンピックなど海外の馬術大会に出場する馬や、海外レースに向かう競走馬などが該当します。入出国の記録を始め、馬の馬体図、特徴、血統、産地に加えて、統轄機関による移動時の裏書やワクチンの接種経歴などが記載されているそう。
特にワクチン接種に関しては馬インフルエンザなどの発生・拡大を防ぐ為に、遠征先の国から求められるワクチンを接種していないと入国すらできません。
馬の身分証としてしっかりとパスポートまであるのは驚きですね。
まとめ
人間と同じように健康手帳やパスポートが必要だとは新しい発見でした。しかしその存在を知ってみると、馬の健康管理にとっていかに大切かが分かります。馬一頭一頭の健康の為、延いては伝染病から馬という種そのものを守る為、決して軽視できないもの。健康手帳に記されたデータを貴重な知的財産として活用することで、一頭でも多くの馬が健やかな馬生を送れるといいですね。








