馬もメタボになる?
スクミという馬の病気をご存知でしょうか?
実は馬も栄養を摂取し過ぎると、人と同じようにメタボになってしまうのです!毎日沢山運動している馬がメタボになってしまうなんて驚きですね。馬のメタボと言われるスクミについて詳しく見ていきましょう。
スクミとは?
スクミとは、馬メタボリック・シンドローム(Equine Metabolic Syndrome)の別名です。略してEMSとも言われており、複数の症状の総称です。馬に関わる人々にとっては、スクミという名称の方が一般的ですね。
スクミの症状による主な病名は、「麻痺性筋色素尿症」や「横紋筋融解症」があげられます。
他にも、「窒素尿症」、「月曜朝病」、「ミオグロビン尿症」などがあります。
これらは症状が似ていることから、総称してタイイング・アップ症候群と呼ばれています。
スクミの原因
実に様々な病名のあるスクミですが、スクミの原因は何でしょうか。
スクミの原因は複数あります。主な原因は、強い運動、遺伝、炭水化物の過給、ストレスや興奮、電解質(ミネラル)バランスの異常です。
特に疲労の蓄積や、急激な運動が引き金になって発症することが多いです。前述の「月曜朝病」という病名は、休養明けに発症しやすいことが多いことから名付けられました。
また、特定の遺伝子を持つ馬が濃厚飼料や青草を多く摂取すると、スクミを発症しやすくなります。
「イージーキーパー」と呼ばれる馬がいます。栄養価が低い牧草や飼料でも、痩せることなく体重を維持できる遺伝子を持った馬のことです。
その昔、痩せた土地で生き抜くことができた馬が持っていた、特定の遺伝子を受け継いでいると言われています。
とはいえ、馬のメタボとも言われるスクミですから、やはり栄養過多が原因で発症する場合が多いようです。
スクミの症状
人のメタボは心臓病、脳卒中もしくは糖尿病のリスクが高くなりますね。馬のメタボとはどのような症状が見られるのでしょうか?
急激な運動をおこなうと、筋肉に蓄積されている大量のグルコース(ブドウ糖)が乳酸になり、それが筋肉に多量に蓄積することで筋肉が変性します。
筋肉が変性すると筋肉中の色素であるミオグロビンが血液中に流出し、腎臓を経て赤黒い尿が排出されます。ミオグロビンは筋肉中で酸素を貯蔵し、エネルギー生産に関与する色素です。尿にミオグロビンが出るので「麻痺性筋色素尿症」と呼ばれます。急性の腎不全や多臓器不全を引き起こし、重篤な状態になることもあります。
また筋肉が変性することで、歩行困難や運動麻痺、筋肉の硬化や腫れなどの症状が見られます。筋肉の硬化は主に、後脚、中臀筋(ちゅうでんきん)、浅臀筋(せんでんきん)、大腿二頭筋の筋肉に見られます。「横紋筋融解症」は、筋肉の変性や融解による、運動機能の異常に着目した際の病名です。
馬が肥満症になった場合、蹄葉炎のリスクを高めることが知られています。これはインスリンの働きが悪くなることで血流障害が起こるためと言われています。また、濃厚飼料の摂り過ぎにより大腸の腸内細菌が死滅し、その際に出る毒素により全身に炎症反応が起こります。炎症反応は蹄に出やすいため、一番最初に発症すると言われています。
予防法は?
スクミの予防には、肥満にならないよう飼料の改善をおこないます。
穀類を主とした濃厚飼料を減らし、低カロリーの餌を与えます。乾草を与える場合には、糖分を除去するために一定時間、水に浸漬することも有効です。糖分の中でも、フラクタンと呼ばれる糖の摂取を減らします。フラクタンを多く摂ると、インスリンの機能を低下させると言われています。
横紋筋融解症は脱水により悪化するため、水を十分に与えると共に電解質も与えます。
また、ビタミンEやセレンなどの抗酸化物質は、筋肉の損傷を和らげるのに有効です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
メタボというと、人間のように過食による太り過ぎから引き起こされる病気と思われますが、実際には多くの原因がありました。
馬の進化の歴史は、常に飢餓との闘いでした。栄養が十分に得られない環境でも生き延びられるように遺伝子が変化し、それが現在の馬の一部に受け継がれてきました。人に飼育されている馬は、ついつい必要以上の餌を与えられることによってカロリー過剰になっています。
我々人間も飽食の時代に生きているからこそ、メタボという現代病が問題になっています。
馬のためにも餌の与え方には十分に配慮し、飼料の与え過ぎによって病気を発症させないよう気をつけましょう。