駈歩が上手くいかないのは、手綱を引いてしまうのが原因かも
速歩のときは軽速歩までスムーズに習得できたのに、駈歩が上手くいかない…という経験はありませんか?実は、駈歩が上手くいかない原因は「手綱の使い方」かも。今回の記事では、駈歩への恐怖心を克服する方法や手綱の使い方について詳しく解説します!
駈歩修得までの流れ
ではまず、駈歩が習得できるまでの道のりを簡単に確認してみましょう。乗っているときは「駈歩を成功させる」ということに夢中であまり意識できないかもしれませんが、駈歩を成功させるまでにはいくつかのステップがあります。
①駈歩について知る
みなさんは「駈歩と速歩の違いを教えて」と聞かれたら、どう答えますか?もちろんスピードも違いますが、脚の運びや乗っている時の人の動きも違いますよね。
もちろん完璧に答えられなくても大丈夫ですが、大まかに速歩との違いを把握しておくことは実際に駈歩を出す上でも重要です。この差を知ることで、この先のステップ②~③に直面したときに自分がどのような扶助を出し、どのような姿勢で乗ったらいいのか見えやすくなります。
②駈歩の「発進」をマスター
先ほども少し触れましたが、速歩と駈歩では馬の4本の脚は動く順番が違います。これは発進の扶助にも関わってくることなので、ここでまず馬の足運びについてお話しします!駈歩をするときの馬の脚は外側後脚→内側後脚→外側前脚→内側前脚という順で前に出ます。
つまり、駈歩発進時の「外側の足を後ろに下げて脚を入れる」という扶助は、駈歩で最初に動き始める外側後脚に合図をすることで「駈歩をするよ」ということと同時に運動の手前を伝える合図というわけです。ちなみに、外側の脚だけで駈歩をしてくれる馬も多いですが、内側の脚も入れる場合は、馬のお腹を押して内包姿勢を作ってあげるとさらにスムーズに正しい手前の駈歩が出せるでしょう。
③駈歩を「続ける」
ステップ②をクリアして駈歩発進ができたら、あとは人が馬の動きの邪魔をしないように気を付けます。そこで重要なのが随伴(ずいはん)。随伴とは、馬の動きに合わせるように人間が動くことです。
駈歩は馬の身体が大きく動く&スピードも速いですよね!そのため馬の動きを予測して、それに合わせた体重移動をしないと車が急発進したときのように置いて行かれる感覚があるかもしれません。これを逆の立場から考えると、馬にとっては「後ろに引っ張られた」ような違和感があります。
さらには、随伴が上手くいかず無意識に手綱を引っ張って馬を邪魔してしまうパターンも…。このように、違和感や誤った扶助によって馬がせっかく出た駈歩を止めてしまうことがあるので、駈歩を続けるためには、まず邪魔しないことが大切というわけです。
手綱を引いてしまうのはなぜ?
さきほど、駈歩が上手くいかないときは「無意識に手綱を引っ張ってしまっていることが多い」とお話ししましたが、進まなければならないはずなのになぜ手綱を引いてしまうのでしょうか?今回は、よくある理由を3つ挙げてみました。
バランスを取ろうとしている
速歩は上下の反動が大きいのに対し、駈歩では前後にうねるような動きが加わります。そのため、駈歩の動きに慣れるまでは上半身のバランスが崩れてしまうことも多いでしょう。
このとき、本来であれば鞍に触れているおしりと体幹でバランスを取ることで上半身が安定します。しかし、つい腕でバランスを取ろうとすることで腕が上がったり開いたりした結果、無意識に手綱を引いてしまうと考えられます。
速度を落とそうとしている
駈歩を出すと、速歩に比べて「急にスピードが上がった」と感じますよね。もちろんこれは駈歩として適切なスピードであって速すぎるわけではありません。ですが、慣れるまでは「速度を落とさなければ」という気持ちになり手綱を引いてしまうという人もいるようです。
恐怖心で手綱につかまっている
駈歩に慣れるまではバランスが崩れやすくスピードも速く感じることに関連して、それを「怖い」と感じて手綱にしがみついてしまうという人もいるはずです。
緊張して手綱を強く握っているときは、身体が縮こまるようにヒジも曲がっていることが多く、拳もぎゅっと握っているので、止まりたいときと同じように手綱は引かれている状態になりますね。
恐怖心を克服するには
では、駈歩に対して「怖い!」と感じてしまう気持ちを克服するにはどうしたら良いのでしょうか?ここまでの話をふまえて、2つの対策を考えてみました。
止まり方を覚えておく
駈歩に対する恐怖感の中には「制御できないかも」「このままさらに速くなってしまったら?」という気持ちがあると思います。その場合、大切なのは止まり方を覚えておくこと。
馬を止めるときは、鐙に足を踏ん張り、体を起こして手綱を引く。これさえ落ち着いてできれば止まれる!という自信を持ってみましょう。いつでも自分の意志で止まれると考えれば、駈歩に対する恐怖心が和らぐ可能性があります。
馬にウマくついていく!
ここで少し、新幹線や車に乗ったときのことを想像してみてください。加速するときはスピードを感じますが、同じスピードでずっと進んでいるときはあまり「速くて怖い」とは感じないのではないでしょうか?
馬に乗っているときも、冒頭にお話しした「随伴」ができていればスピードに乗って同じ速度で進んでいる乗り物のように、あまり加速を感じることはないので恐怖感も軽減されるはずです。
手綱の使い方のコツ
最後に、駈歩をうまく続けるための手綱の使い方についてお話しします。ほかの歩様にも共通するポイントなのでしっかり確認しておきましょう!
正しい位置を保つ
手綱を握る拳の位置は、騎乗中大きく変わることはありません。もしイメージしにくい場合は、インストラクターさんが乗っている姿や、競技会に出ている選手の動画などを見てみるのも良いかもしれませんね。
まずは姿勢を整えてから、拳の位置の確認です。拳の位置は、鞍の前橋(ぜんきょう)の少し上あたり、もしくは自分のおへそくらいの高さをイメージします。曲げたヒジがちょうど自分の脇腹に触れるくらいの位置で保ちましょう。
手綱自体は、上記の腕の位置で握ったときに緩すぎず引っ張りすぎず、手綱がねじれなくまっすぐ張っている状態がベストです。
手綱の調節は拳とヒジで
では、馬の動きに合わせて手綱を調整するときはどうしたら良いのでしょうか?基本的には正しい位置に保ちながら、馬が推進する(首が前に伸びる)タイミングで少し手綱を譲るというのが駈歩での基本的な動きになります。
手綱を譲るときは、脇腹に付けていたヒジを少しだけ前方に緩めてみましょう。逆に、速歩に落としたり停止したりするときはゆるく握っていた拳をしっかり握って手綱を引き、ヒジも少し後ろに引きます。
まとめ
始めたばかりの頃は「速歩と全然動きが違う!」と戸惑うことも多い駈歩。ですが、ポイントを押さえれば馬と一緒に気持ちよく風を切ることができる歩様でもあります。駈歩は競技にも必須な歩様なので恐怖心を克服し自由に出せるようにマスターしていきましょう!