鐙の踏み具合を意識していますか?
乗馬を習っている方なら誰もが一度は「鐙をしっかり踏んで!」と指導された経験があるのではないでしょうか。しかも「踏んでいるつもりです!」と心の中で思ったことはありませんか。鐙を「踏む」と言っても、元々「踏む」という言葉の持つイメージとは少し違うようなんです。鐙がずれてしまう方も必見!今回は鐙の踏み方について深掘りします。
踏む位置
まず、鐙を踏む位置を確認しましょう。踏む位置は指の付け根と言われています。それ以上、深くならないように気をつけましょう。深く履いていた方が鐙はずれないかもしれません。しかし、鐙が深い位置にあると、落馬をした際に足が鐙から抜けなくなることもあります。鐙が抜けないと馬に引きずられてしまうことになり、大変危険です。ずれてしまっても、すぐ指の付け根の位置に戻せるよう、指にも力を入れすぎないようにしましょう。
この位置で鐙を踏むのには落馬時の危険を回避する以外にも、脚が使いやすいという理由もあります。土踏まずで鐙を踏んでしまうと、脚自体に余計な力が入りやすくなり、実は合図がしづらくなるんです。そのため、鐙の踏む位置や踏み具合は、騎乗姿勢と同じくらい大切です。
踏み具合
「踏む」と言われると「地面に向けて力を入れて踏みしめる」ようなイメージを持ちますよね。筆者もずっとそう思っていました。鐙を踏めなくてはならないのは知っていましたが、どうやって踏むのが正しいのかを知らなかったからなんです!鐙がずれたり、脱げたりしないようにするにはどうしたらいいのかと考えると、地面に向かって下に踏み込むイメージが湧いてきませんか?それが正しいのだと思っていました。
力の入れ具合
実は鐙には軽く足を乗せるだけでOK!鐙を強く踏み込んでしまうと、鞍に体重が全てのっかってしまい、馬も動きづらくて、人間も脚を使いづらくなってしまい、いいことがありません。指の付け根の部分を鐙に乗せて、踏むタイミングがきたら、鐙がずれないように上から押さえるイメージで踏んでみましょう。例えば、家で椅子に座っているときに、床においた足には力を入れないですよね。そのイメージで、踏むタイミング以外はただ鐙の上に置いておくだけで大丈夫!
こうすることによって、股関節や脚全体の力も抜けて、膝で馬体を締めたり、鐙がずれてしまったりすることを防げます。また、余分な力が入っていないため、踵も下がりやすく、脚での扶助も入れやすくなります。
踵を下げるには?
正しく鐙を履けていれば、踵は自然と下がってくるので、まずは正しい騎乗姿勢で正しく鐙を踏めるようにしましょう。踵を下げることを意識しすぎると、やはり鐙を強く踏み込みすぎてしまい、脚が前に流れてしまうことから、速歩や駈歩の継続が難しくなってしまいます。
鐙を踏むタイミング
大切なのは踏むタイミング。感覚でつかめるようにしましょう。例えば、馬の反動で体が下から突き上げられるタイミングで鐙を強く踏んだらどうでしょうか。このタイミングで鐙を踏みこんでしまうと、体が鞍の上ではねてしまい、鐙も踏みにくくなってしまいますよね。鐙を踏むタイミングは内側の前肢が着地するタイミング。速歩なら座ったタイミング、駈歩なら「タカターン」の「ターン」の部分です。しかし、馬の1完歩のリズムを乗り手が感じられなくてはなりません。レッスンで意識してみてくださいね。
鐙を使うときの注意点
鐙の長さとバランス
鐙の長さについては、左右均等に力が入る長さに毎回、調整しましょう。基本的には脚をだらんと脱力した状態で下に伸ばしたときに、くるぶしのあたりに鐙の踏む位置がくるのがいいとされています。しかし、人によってちょうどいいバランスの取れる位置が違うと思います。馬場なのか、障害なのか、競技などによっても多少変わる可能性も。
また、乗り手が多少の違和感を感じながらも鐙の長さを変えずに騎乗していた場合、馬にはさらに強い違和感があるため、負担になってしまいます。準備運動の段階で鐙の長さに違和感があったら、長さを調整しましょう。また、騎乗するのも、下馬するのも、馬の左側からであるため、左側の鐙革が伸びやすくなることにも注意が必要です。特に自分の鞍を所有している方には、左と右の鐙革をコンスタントに入れ替えることをおすすめします。
鐙の選び方
鐙を踏んでいるときの感覚は素材が金属なのか、プラスチックなのかによってもかなり変わってきますよね。自分の鞍を持っている方は、自分好みの素材を使用した鐙を用意するといいかもしれません。最近では滑り止めがついているものもあります。また、セーフティー鐙と呼ばれる落馬したときに足が鐙から抜けやすい設計になった安全性の高いものも。いざという時のために、こういった鐙を使用するのもいいかもしれません。
まとめ
いかがでしたか。今回は鐙の踏む位置や踏み方、注意点などをご紹介しました。もしかしたら、「踏む」という言葉遣いが乗り手に勘違いをさせている可能性があるのではないかと、執筆していて感じました。鐙は「足を軽く置く感覚で踏む」ことを意識しましょう。