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前肢旋回ってどんな技?

馬場馬術では、馬をその場で回転させる運動があります。この運動を「旋回」といいます。
旋回には前肢を回転の軸とする「前肢旋回」と、後肢を回転の軸とする「後肢旋回」があります。

今回は、前肢旋回についてまとめました。

前肢旋回とは

前肢旋回ってどんな技?
前肢旋回は、馬の前肢を中心に後躯が旋回する運動です。

具体的には、「前肢のどちらかを軸として、後肢を交差させながら前肢の外周に後躯を旋回する運動」です。馬の内方の前肢をコンパスの針と考え、後肢で円を描くという表現がわかりやすいでしょうか。

左前肢旋回では馬の左前肢を中心にするので、回転運動終了まで左前肢の位置は変わりません。右前肢旋回については、左前肢旋回とは逆の動きになります。

前肢旋回は、実際にやってみると馬が旋回の途中で止まってしまったり、前後に歩いてしまって回転にならず、最初のうちは難しいと感じてしまいます。

やり方

前肢旋回ってどんな技?
前肢旋回のやりですが、左手前常歩で蹄跡行進をしている場合を例に説明します。

1. 気をつけをしている状態から、徐々に歩度を詰めます。
詰めるときはハーフホルト(半減却)を使います。
ハーフホルト(半減脚)は脚で馬を活発にしておいて、バランスバックと手綱で瞬時に停止の動作を入れながら、停止させずに前進させた後、拳を譲る動作です。

2.内方(左手綱)を開き手綱にして、内方脚(左脚)で腹帯の辺りを1歩ごとに圧迫します。このとき外方脚はやや後ろに引き、馬の腰が急に膨らまないように軽く押さえておきます。

内方手綱を開くことで、馬を回転方向に誘います。また内方脚を使うことで、馬に回転を与え、内方後肢が交差をするように外方側へ踏み込むことができます。
外方手綱は押し手綱で馬を支えつつ前進するのを抑制します。外方脚は腹帯のやや後で回転運動を調節するために使います。

前肢旋回では前肢がその場で足踏みをし、実際に前に進んでしまわないようにブレーキを掛けつつ、内方手綱での内方側への方向指示と、外方手綱と外方騎座・脚のバランスで前肢よりも後肢が回転していくのを保ちます。

馬が旋回している間、扶助はそのまま使い続けます。開き手綱を続けることで馬の頸は内方に向くため、馬は馬体を真っすぐにしようと腰を外に振るので旋回し続けることができるのです。

馬が止まりそうになっても手綱の操作を続けること、推進が必要なら内方脚の圧迫を足すことがポイントです。

乗り手の座骨は常に鞍の真中へ位置し、馬の腰と平行するように動作を合わせて旋回します。

3.旋回が終わったら拳をそろえ、馬を真っすぐにします。
ここで常歩のリズムが遅くなってしまったら、脚を使って元のリズムへ戻します。早くなった場合は、ブレーキでコントロールします。
旋回が終了しても馬が真っすぐになるまで指示を止めないよう、最後まで気を抜かずに頑張りましょう。

このやり方に乗り手が慣れて馬が反応しやすくなってきたら、開き手綱の使う量や脚の使う量、最初の歩幅の詰める量を減らしていけるのが理想です。
馬にも個体差や能力差があります。少しずつ進めていきましょう。

得られる効果

前肢旋回ってどんな技?
前肢旋回で得られる効果について、馬と乗り手それぞれについてまとめました。

馬への効果

1.柔軟性(サプルネス)を高める
馬にとって、旋回は馬体を緊張させてしまう運動です。ほとんどの馬は最初に旋回運動をさせようとすると、反抗して体を緊張させ硬くなってしまいます。これは馬の筋肉にとってマイナスです。しかし、くり返し練習することで筋肉の柔軟性が得られるでしょう。

2.扶助を理解させ、反応の良い状態をつくる
馬に対して乗り手の扶助を理解させることは、根気が必要な作業です。特に前肢旋回は、馬へ理解してもらう扶助がいくつもあるので、馬との根気強いコンタクトが必要となります。馬も人とのコンタクトを継続して行うことで扶助を理解し、乗り手の指示に従う状態になります。

3.リラックスした状態をつくる
馬の精神状態を良好に保つためにも前肢旋回は是非レッスンに取り入れましょう。乗り手の扶助を理解することで、精神面が鍛えられるそうです。旋回運動は、フィジカルだけでなくメンタルを鍛える最適な運動です。どんな時でもリラックスした状態を保つことができるようになります。

騎手への効果

1.斜体扶助のトレーニング
内方脚を使うことで推進し、その力を外方の拳で受けることを斜体扶助といいます。前肢旋回は、脚、拳、騎座そして減却という多くの扶助をおこなう運動です。トレーニングを重ね、乗り手の一連の指示が正しくおこなわれることで、馬が前肢旋回ができるようになります。

2.バランストレーニング
前肢旋回の扶助を正しくおこなうだけでは、前肢旋回はできません。乗り手のバランスも必要となるので、前肢旋回は良いトレーニングになります。

前肢旋回は、後肢の動きをしっかり感じることで、内方脚を使うタイミングやバランスを保つ扶助の使い方がわかります。バランスを保ちつつ続けていく為には、細かな修正の扶助をおこなう必要があります。
そのために内方脚や手綱も使うので、外方騎座で自分をきちんと真っ直ぐ保ち、自分の姿勢を立て直すことが必要です。

まとめ

前肢旋回ってどんな技?
いかがでしたでしょうか?

今回は前肢旋回についてまとめました。

前肢旋回とは前肢を軸にして、後躯を交差させながら前肢の外周を後躯が旋回する運動です。

馬のトレーニングの一環としても、人の馬の動作途中での修正の扶助や、馬の動きを感じるためにも、前肢旋回はとても良い練習になります。

根気よく練習して感覚がつかめるようになれば、その後のレッスンに大きく役立つこと間違いありませんよ!

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