拍車を使うメリットとデメリット
ある程度の鞍数を重ねるとインストラクターから使ってみたらとすすめられる「拍車」。つけた方が楽に乗れるのかもしれないけど、馬を怪我させたり、パニックにさせてしまいそうで心配という方もいらっしゃいますよね。そんな方に向けて、今回は拍車のメリットやデメリット、選び方などについて紹介します。
拍車とは
拍車とは、踵部分に装着する突起または円盤状のもので、副扶助の一種です。鞭よりも馬に与える刺激は強く、副扶助の中ではうまくいかなかったときに最終的に使うといったイメージがあります。それだけ、馬の前進気勢へのインパクトは大。合図を入れてもなかなか動いてくれない重い馬でも、拍車をつけるとスムーズに動いてくれることがあります。文字通り「拍車がかかる」状態ですね。
しかし、その反面、敏感な馬に使いすぎてしまうと、馬がイライラしたりパニックになってコントロールできなくなってしまう可能性もあります。メリットとデメリットを知って、適切なタイミングで使うようにしましょう。
メリットとデメリット
メリットとしては、乗り手の合図が伝わりやすく、乗り手にとっても馬にとっても、力づくで合図する必要がないことです。馬に乗るのは見た目以上に体力を使います。なるべく、楽に力を使わずに騎乗したいですよね。重い馬に乗ると、どうしても力が入ってしまい、体力を消耗してしまいがちです。そんなときに拍車を付けると、多くの馬たちが脚で強い合図を入れなくても動いてくれるようになります。そのため、レッスンの効率も上がります。
馬がスムーズに動いてくれるため、脚に力を入れて合図を送る必要がないと、姿勢のバランスが大きく崩れてくるようなことも少なくなってきます。拍車を付けると姿勢も安定してくる方が多いようです。
デメリットもいくつかありますが、乗馬愛好家が最初に思いつくのは、姿勢がある程度は安定していないと拍車を意図せずに入れ続けてしまうことではないでしょうか。つま先は進行方向、踵は下げるを実践すれば、拍車が入り続けることはありません。拍車をつけていても、脚は全体的に力を抜いておきましょう。
拍車を当てたまま脚を動かしてしまうと拍車傷をつけてしまうことがあります。むやみに強い力で拍車をかけることが絶対にないようにしましょう。また、拍車に頼りすぎてしまうと脚での合図がおろそかになってしまうかもしれません。理想はどんな馬にも拍車をつけずに乗りこなせること。拍車をつけているときもいないときも脚での扶助がおろそかにならないようにしましょう。
拍車の種類と選び方
拍車には棒拍(ぼうばく)と輪拍(りんぱく)があります。
棒拍(ぼうばく)
棒拍は棒状の突起物をブーツに付ける拍車です。馬のお腹にあたる部分が丸めてあるものは、あたりが柔らかいので、余計な刺激を馬に与えません。棒の長さも15mm〜40mmと幅広く、必要に応じて選べます。15mm〜25mm程度の棒拍はあたりも柔らかめでお腹にも傷がつきづらいので、おすすめです。
棒拍の長さは長いほど、あたりは強くなります。先端が丸まっているものより、平面のものの方があたりは強め。また、棒拍の先端が下を向いていれば向いているほど、刺激は弱くなっていきます。大体20mm前後、先端が丸く、やや下向きの角度を付けた拍車が売れ筋のようです。
輪拍(りんぱく)
輪拍はよくウェスタン映画でカウボーイがつけている円盤状のものが先端についている拍車です。一見すると痛そうですが、実は回転することによって、力を分散させているため、傷や痛みは最小限にとどめられるのだそうです。ただし、棒拍より輪拍の方が刺激は強いと言われています。
その他
拍車は乗馬をする上で大切な道具だと考えられていることから、馬術競技会にて拍車の装着は、義務のことがほとんど。拍車を付けたくない敏感な馬をパートナーとする場合は、棒拍の棒部分がない疑似(ダミー)拍車を付けることもあります。使用できる拍車の種類は大会によって規定が異なりますので、確認の上、購入しましょう。
拍車に慣れてきたら、何種類か購入を考えてみるのも◎。ベテランタイダーはパートナーによって、拍車を使い分けているのだそうです!
正しい使い方
まず、正しいサイズの拍車を購入しましょう。鐙の横幅によってサイズが違います。レディースとメンズのサイズ分けをしているメーカーもあれば、計測した数値によってサイズを展開しているメーカーも。サイズが大きすぎると拍車がずれてしまって、馬にずっと当たってしまうので要注意。また、拍車を装着するためのベルトも革製のものがおすすめ。少し値が張りますが、ずれにくく、長く使用できるメリットがあります。
拍車は合図を出すときだけ、馬のお腹に当てるようにします。ガニ股が癖になってしまっている方は常に拍車がお腹にあたらないように注意が必要。股関節の力を抜いて、脚全体を馬体に密着させましょう。必要以上に踵を下げようとしすぎず、鐙を踏む時は親指側に少しだけ多めに体重をかけるようにします。また拍車で圧迫しながら動かすのはNG。かなり強い刺激になるため、拍車傷を作る原因になりますし、反抗にもつながります。
ブーツには拍車止めがついているものもありますが、少し高めの位置にあり、強く当たってしまう可能性も。高さが気になる方やO脚などで無意識に拍車を入れてしまう癖のある方は、拍車止めの下に拍車をつけるか、拍車止めのないブーツを着用することをおすすめします。
まとめ
今回は、使ってはみたいけど躊躇してしまいがちな「拍車」についてご紹介しました。インストラクターからすすめられたということは、拍車を使ってももう問題ないレベルに達していると判断されたはず。拍車に敏感に反応しない馬をパートナーに少しずつ練習を始めてみたらいかがでしょうか。