慣れてきたころに感じる「怖さ」の理由
乗馬を始めて、慣れてきたころに誰もが1度は壁にぶつかります。原因はそれぞれですが、「怖さ」を感じるようになってきたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。乗馬を続けてきたライダーには同じような経験をしている方も多いはず。今回はその「怖さ」の理由を分析してみます。理由が分かれば、あとは対処をしていくだけです。では、さっそくみていきましょう。
馬の圧倒的なパワーを感じた
よくあるのが馬のパワーを感じたことによるものではないでしょうか。初心者のころは、おとなしいベテラン練習馬がパートナーになることが多いですよね。上達してくると、別のタイプの馬がパートナーになることがあります。そのタイミングで暴れるなどヤンチャをされてしまったりすると馬の本来のパワーを感じて怖くなることがあるかもしれません。ただ、この「恐怖」は人間の防衛本能として自然なものです。体が馬のとっさの動きや加速に反応して自分を守ろうとしている正常な反応です。しかし、これは人間の本能による「恐怖」なので、残念ながら即効性のある解決策はありません。少しずつ馬の動きに慣れていきましょう。では、馬の動きに慣れるまでは、どのような点に注意をして騎乗をしたらいいのでしょうか。
乗馬を始めて少し経ったころには、乗馬を始めたばかりのころにパートナーだった馬たちと少しタイプの違う「軽い馬」がパートナーになることがあるかもしれません。「軽い馬」とは、あまり合図を強く入れなくても積極的に動いてくれる馬のことです。初心者のころはしっかりと合図を入れないとなかなか動かない「重い馬」がパートナーだったことが多いのではないでしょうか。軽い馬の場合は馬が前に動こうとする「前進気勢(ぜんしんきせい)」が強く、騎乗した時から手綱を通じ、馬が前に進もうとするパワーを感じて、最初は戸惑うかもしれません。
このときに注意すべきなのは、合図の強さ。軽い馬は合図を入れるお腹の部分が敏感なので、軽くタッチするくらいの合図から始めて、馬の反応を見ながら強めていくのが◎。最初から重い馬に合図するように軽い馬に合図を入れると、大きく反応をして尻っぱねをしたり、反抗をされたりすることがあるかもしれません。この反応で馬の圧倒的なパワーを感じてしまって、怖くなってしまうこともあります。
また、馬は人間よりパワーがある動物なのだと最初から認識をしておくと少し違うかもしれません。乗馬をしていると、あらゆるタイミングで馬本来のパワーを体感することもあるはず。落馬をしてしまったり、走られてしまうこともあるかもしれません。馬に乗っていればそういったことが起こりうると考えて、実際、そのときにはどうすればいいのか、対策を頭の片隅に置いておくだけでも、少しずつ恐怖感をコントロールできるようになるはずです。
習ったことが理解できない
最初から習ったことを全て理解できて体現できればベストですが、ほとんどの方は習ったことを完全に理解して、すぐに体現するのは難しいのではないでしょうか。そのため、このままでは一生うまくならないかも、という「恐怖」も出てくるかもしれません。
指摘をされたタイミングで言われたとおりやってみたら、そのときには対応できたとしても、指摘されたことの意味を理解していないと再現性が低くなってしまいますよね。ただ、ご安心ください。乗馬を続けていると、あのときインストラクターが言いたかったのはこのことなんだ、とピンとくるタイミングが突然やってきます。趣味で乗馬を楽しむのであれば、そのタイミングで自分のものにすることができれば十分なのではないでしょうか。インストラクターに聞いてみると、ライダーが自分に求めている基準が高すぎることが多い。もう少し力を抜いて楽しんでもいいと話していました。
そもそも、乗馬は上達スピードが他のスポーツと比べて、ゆっくりだと言われています。それはパートナーである馬たちにも体調や機嫌などがあるからです。馬上で体調などを把握しながら、教わったことを馬に伝えたうえで、一緒に体現していかなくてはならないので、最初から完璧にうまくいくことはなかなかありません。ライダーが教わったことを理解できて、うまく対応してみても、馬側のコンディションや気持ちが整っていない場合もあるからです。うまくできなくても「そんなこともある」というある程度、開き直った気持ちで、まずは乗馬を楽しんでみませんか。
自分の技術に自信がない
馬はライダーをよく見ています。ライダーが自信を持って乗っているのか、そうでないのかはすぐに見抜いてしまいます。自信のないライダーは思い切った扶助ができないことも多いため、メリハリのない合図になってしまい、馬も少し飽きてきたり、だれてしまったりすることも。馬によってはわがままを始めて、突然、止まってしまったり、指示を聞かずに動きだしたりすることもあります。ここで「恐怖」を感じて、萎縮してしまうとさらに馬につけこまれて、さらに自信をなくしてしまう、という悪循環な経験は乗馬経験者なら1度はあるのではないでしょうか。
この場合、わがままをしようとする前に「ダメだよ」と教えてあげるのがベストです。ただ、最初からそこまで馬の気配を察するのは難しいですよね。まず馬がよくないことをしたときには、分かりやすくダメだと教えてあげることから始めましょう。脚を強めに使ったり、鞭を入れてみたり、パートナーによって効果の高いコミュニケーションの方法を使ってメリハリをつけて伝えてください。きちんと指示に従っているときは合図を緩める、指示をしていないのに止まろうとしたら、合図を強めに入れる。これを繰り返すだけでも馬の反応が良くなります。こうなると人間も少しずつ自信を持って騎乗できるようになってきます。下手なのではなく、合図をどのタイミングでどうやって使うのかの経験値が低いだけなので鞍数を重ねていけば、大丈夫です。
そうはいっても、鞍数を重ねるまではどうしたらいいのか分からないという方には「王様の騎乗」をお試しいただくことをおすすめします。筆者はよく「王様になったつもりで騎乗しなさい」と言われます。合図を入れたら「さあ、指示はちゃんと出しましたよ」といった王様のようなメンタリティーや胸を張る堂々とした姿勢で馬とコミュニケーションをとるというイメージで騎乗してみるのです。何から始めたらいいか分からない方も取り組みやすいので、ぜひ!
まとめ
いかがでしたか。今回は乗馬を始めて慣れてきたころにぶつかる恐怖の壁について解説しました。乗馬を続けていれば、誰しもが一度はぶつかる壁なのではないでしょうか。それでも、乗馬が好きだという方は無理のない範囲で騎乗を続けていただきたいです。人間はよくも悪くも「慣れの動物」。怖いと思っていたことに対しても、少しずつ冷静に対応できるようになってくるはず。恐怖の壁をパートナーと一緒に乗り越えた時の爽快感は格別です!