「白馬に乗った王子様」について
スペックの高い男性や運命的な相手を指す「白馬に乗った王子様」という表現。しかし、理想の男性はなぜ「白馬」に乗っているの?栗毛や黒鹿毛ではダメなの?ということで、今回の記事ではこの表現が生まれた背景や白馬について解説します!
白馬の王子様が理想の男性像となった背景は?
女性のピンチに颯爽と現れる理想の男性像「白馬の王子様」。このイメージが定着したのは一体いつ頃なのでしょうか?
白雪姫や眠れる森の美女
みなさんは、白馬の王子様と言えば、ヨーロッパ風の王子様を想像するのではないでしょうか?そのイメージ通り、おそらく「白馬の王子様」はグリム童話など西洋のおとぎ話がその源流と考えられます。
ただし、日本においては童話そのものというよりも、それを原作として映像化した作品の影響が大きいかも。例えば「白雪姫」でお姫様にキスをしに来る王子様や、「眠れる森の美女」で白馬に乗ってドラゴンに立ち向かう王子様に憧れたことがある女性は多いのではないでしょうか?
英語では「白馬の王子様」ではない?
外国のポップソングでも「王子様が白馬に乗って迎えに来る」というフレーズがあるので、王子様=白馬というのは多くの国に共通するイメージなのかもしれません。ただし、外国では必ずしも素敵な男性を「白馬の王子様」と表現するとは限らないようです…。
例えば、英語圏で「物語に登場する王子様」や「王子様のような好青年」を指す言葉としてはプリンス・チャーミング(魅力的な王子様)という表現が頻繁に使われるのだとか。
また「女性の危機に駆け付ける男性」は、王子様でなくナイト・イン・シャイニングアーマー。つまり、輝くような甲冑を纏う「騎士」と表現されることも多いみたいですよ。
いずれにしても、騎士や王子様は「幼い子供が夢見るもの」や「高すぎる理想」「夢見がち」といった文脈で登場することが多いので…現実ではなかなか白馬の王子様には出会えない!というのもまた、万国共通の意見なのかもしれませんね。
高貴な人が乗る馬はなぜ白馬なの?
ここまでは理想の男性像としての「白馬の王子様」について掘り下げてみましたが、歴史上の人物も白馬に乗った姿で描かれることがあります。このように、高貴な人が白馬に乗っている場面が多いのはなぜなのでしょうか?
白は特別な色
お祭りなどで、白馬が子供や御幣束をのせて歩いていることがあります。これは、日本において白馬が神様の乗り物や使者とされているため。また日本だけでなく、西洋の神話や伝説などにも翼の生えた馬「ペガサス」や、角の生えた「ユニコーン」などの白馬が登場します。
本来は茶色~黒であることが多い馬ですが、珍しい白馬は特別視され、神様のような「特別な存在が乗る動物」として認識されてきました。その延長として身分の高い人なども白馬に好んで乗るようになったのではないでしょうか。
存在感をアピール?
突然ですが、フランスの英雄・ナポレオンと言えば馬にまたがりマントを翻す肖像画。この絵でナポレオンが騎乗しているのも白い馬なのですが、実は白い馬は目立つので、本来は軍馬には向かないとされています。
その常識を覆して、危険を顧みず目立つ馬に乗ったのはなぜなのでしょうか?諸説ありますが、敵にその堂々たる姿を見せつけることで、ナポレオンは自らの自信の程や戦況の優位性を相手に知らしめようとしたとも言われています。
ちなみに、この肖像画に描かれたのはナポレオンの愛馬・マレンゴ。とても優秀な軍馬で、戦場で白馬に乗ったのは上記のような戦略的理由でなく、ナポレオンは単にマレンゴ以外の馬に乗りたがらなかったのだとも言われるほどです。
映像的な美しさ
日本人なら(多分)一度は見たことがある「暴れん坊将軍」でも、松平健さんが白馬で疾走する姿はインパクトがありますよね。このように、映像作品において高貴な人が白い馬に乗ることが多いのは「映像的な美しさ」という理由もありそうです。
余談ですが、吉宗役の松平健さんが白馬に乗っているのは第2シリーズから。第1シリーズは黒鹿毛の馬を走らせています。もしかすると、第一シリーズでの人気や美男子っぷりを受け、そのイメージをより強調するために白馬が起用されたのかもしれません。
ちなみに、江戸時代以前に実際の武将たちに人気だったのは真っ白な馬よりも「連銭葦毛」と呼ばれる円形のまだら模様を持った葦毛の馬だったそうですよ。
白馬が生まれる確率は?
見た目も美しい白馬ですが、特別視される理由は美しさだけでなく「貴重さ」にもありそうです。実際のところ、白馬はどれくらい珍しいのでしょうか?
そもそも「白馬」とは
体毛の白っぽい馬=白馬と思われがちですが、純粋な白毛の他に佐目毛や葦毛なども体毛が白に近い個体が居ます。そのため、真っ白の「白毛」だけでなく佐目毛や葦毛の馬も白馬と呼ばれていることがありますね。
大きな違いとして、白毛と佐目毛は地肌がピンク色ですが、葦毛は鹿毛や栗毛と同じく地肌は黒。また、佐目毛は色素が薄いので目の色も美しいブルーや灰色が多いのに対し、葦毛の馬はたいてい黒~茶色の目をしています。
葦毛の馬は年を取るにつれて体毛が白に近付きますが、若い頃は栗毛や鹿毛のような色です。「葦毛の怪物」と名高いオグリキャップも、現役時代は濃い灰色でしたが晩年は白馬のような美しい姿でしたね。
ちなみに、白毛は突然変異に近い「白変種」とも呼ばれ、鹿毛や栗毛の親から白馬が生まれることも。しかし、色素を持たずに産まれてしまう遺伝疾患「アルビノ」とは異なり皮膚や眼が極端に日光に弱いなどの欠点はないと言われています。
毛色と出生の確率
では、白い馬が生まれる確率というのは実際何%くらいなのでしょうか?まずは、純粋な白馬と言える「白毛」。先ほども触れたように白毛は突然変異のようなもので、その出生確率は0.04%と非常に低くなっています。
佐目毛に関してはサラブレッドには無い毛色であり、クオーターホースや一部の和種(日本古来の品種)に発現するため、正確な出生確率は不明。ただし、遺伝的な理由で発現するという点から考えると、突然変異に近い白毛よりは出生確率が高いと考えられます。
最後に葦毛ですが、葦毛を発現させる遺伝子は、ほかの毛色関連遺伝子に対して優勢とされています。つまり、両親のどちらかが葦毛であれば葦毛の子供が生まれる可能性があり、実際の出生確率は約7%。
鹿毛や栗毛と比べれば少ないとはいえ、葦毛は白毛に比べればかなり多数派。日本で「白馬」と呼ばれている馬のほとんどが葦毛と考えても良いかもしれませんね。
まとめ
白馬と言えばロマンチックなイメージが強いですが、その貴重さや美しさに魅せられて実際に白馬を好んだ歴史上の人物もいるようです。栗毛や鹿毛に比べると出会える確率は低いですが、みなさんも機会があればぜひ「白馬の王子様」のように颯爽と乗ってみてくださいね!