馬の冷え対策

冬の厳しい寒さは、愛馬の健康や運動パフォーマンスに大きな影響を与えます。
馬は比較的寒さに強い動物ですが、気温の低下による筋肉の強張りは怪我のリスクを高め、体温維持のためのエネルギー消耗は体調不良の原因にもなり得ます。
今回は馬の健康を守り、冬場でも安全にライディングを楽しむための「冷え対策」を解説。
騎乗前後の適切なケアから、馬着選びのポイントまで、愛馬が冬を快適に過ごすための秘訣をご紹介します。
騎乗前の防寒対策

冬場の騎乗において最も注意すべき点は、寒さによって馬の筋肉が収縮し、硬くなっていることです。人間と同じように、馬も体が冷え切った状態で急に動かすと、筋繊維を傷めたり、関節に負担がかかったりして怪我の原因となります。そのため、騎乗前のウォーミングアップと並行した防寒ケアが不可欠です。
まず、馬房から出してすぐの段階では、エクササイズシート(腰馬着)を活用しましょう。馬の大きな筋肉が集中している腰や臀部を冷やさないように覆ったまま常歩を開始することで、徐々に体温を上げることができます。また、冬場はブラッシングにも防寒の意味があります。丁寧にブラッシングをすることで皮膚の血行を促進し、筋肉をほぐす効果が期待できます。特に背中や腰周りを重点的にマッサージするように手入れを行うことが推奨されます。
さらに、馬装の際にも配慮が必要です。冷え切ったハミをそのまま口に入れることは、馬にとって非常に不快であり、ストレスから口を割ったり反抗したりする原因になります。ハミは自分の手で温めるか、お湯で少し温めてから装着するといった、細やかな気遣いが馬との信頼関係を守ります。
また、腹帯を締める際も、筋肉が硬い状態では窮屈に感じやすいため、通常よりさらにゆっくりと、段階的に締めていくことが大切です。しっかりとした準備運動によって、馬の心身が「動ける状態」になってから本格的なワークに入るようにしましょう。
騎乗後の防寒対策

運動を終えた直後の馬は、代謝が上がり体温も高くなっていますが、ここで最も注意すべきなのが「湯冷め」ならぬ「汗冷え」です。冬の冷たい外気に汗をかいた体がさらされると、気化熱によって体温が急激に奪われ、風邪を引いたり疝痛を引き起こしたりするリスクが高まります。
騎乗後、まずはクーラー(汗こき用馬着)を着用させることが鉄則です。クーラーは通気性と吸湿性に優れたフリースやウール素材でできており、体の水分を逃がしながら、冷たい外気を遮断して体温を維持する役割を果たします。
馬の毛が完全に乾くまでは、厚手の防寒用馬着をすぐに着せるのではなく、湿気を外に逃がすクーラーを使用し、馬体がサラサラの状態になるまで待ちましょう。もし汗がひどい場合は、乾いたタオルでしっかりと水分を拭き取ることが重要です。
また、脚元のケアにも冷え対策の視点が必要です。夏場のように冷水で勢いよく脚を冷やしすぎるのは、冬場は逆効果になる場合があります。泥汚れを落とす程度に留めるか、必要に応じてぬるま湯を使用し、洗浄後はすぐに水分を拭き取って脚が冷え切らないようにしましょう。最後に馬房に戻す際は、その日の夜の気温を予測し、適切な厚みの馬着に着せ替えます。運動で温まった体が冷える過程を緩やかにすることが、冬場のコンディショニングにおいて最も重要なポイントとなります。
馬着の選び方

馬着(ラグ)は、馬にとっての「洋服」であり、その種類や厚みは気温、馬の体質、さらには「毛刈り」をしているかどうかによって慎重に選ぶ必要があります。選定を誤ると、暑すぎて汗をかいてしまったり、逆に寒すぎて体力を消耗させたりするため、正しい知識が求められます。
まず考慮すべきは中綿の量(グラム数)です。一般的に、秋口や春先の肌寒い時期には薄手の「ライトウェイト(0〜100g程度)」、本格的な冬には「ミディアムウェイト(200g前後)」、氷点下になるような厳寒期には「ヘビーウェイト(300g以上)」というように使い分けます。ただし、毛刈りをしている馬は自力での体温調節機能が低下しているため、通常より1ランク厚手のものを用意する必要があります。
次に、使用環境に合わせた素材選びです。屋外の放牧場で使用する場合は、防水性と耐久性に優れた「ターンアウトラグ」が必須です。一方、馬房内で過ごす時間は、通気性が良く蒸れにくい「ステーブルラグ」が適しています。
サイズ選びも重要で、大きすぎるとズレて足に引っかかる危険があり、小さすぎると肩周りの擦れ(肩擦れ)の原因になります。き甲(首の付け根)から尾の付け根までの長さを正確に計測し、馬の動きを妨げないフィット感のものを選びましょう。最新の馬着には、裏地に赤外線効果のある素材や抗菌素材を使用した高機能な製品も増えています。
愛馬の様子(耳の付け根が冷たくなっていないか、逆に馬着の中に手を入れて汗ばんでいないか)をこまめにチェックし、その時々の状況に最適な一枚を選択することが、最高の冷え対策となります。
まとめ

冬の馬の冷え対策は、「怪我の予防」と「体調管理」の双方において極めて重要です。
騎乗前は入念なウォーミングアップとマッサージで筋肉を温め、騎乗後は汗冷えを徹底的に防ぐケアを行いましょう。愛馬の環境や体質に合わせた適切な馬着選びは、健康維持の基盤となります。
日々の観察を通じて、馬が発する小さなサインを見逃さず、愛情を持った細やかな防寒対策を心がけてくださいね。








