【馬の健康を守る】知っておきたい栄養素

食が豊かになるにつれ、わたし達は栄養バランスに気を配って食事を取るようになりました。このように人間が毎日の食事を健康管理のひとつとして重要視しているのと同じく、馬にとっても健康状態を左右する食事はとても大切です。
むしろ言葉でコミュニケーションが取れない分、体つきやその日の体調など馬の様子から繊細に読み取らなければならず、馬の食事と簡単に言ってもなかなか大変なのではと想像がつきますね。
しかしよく考えてみると馬の健康維持に必要な栄養とはなんでしょうか。わたし達が必要とする栄養とは違うのか、少し気になりますよね。ということで、今回は馬の栄養に焦点をあてて調べてみました。
馬に必要な栄養素

つやつやと光っているような馬体は栄養状態や健康状態が良好だというバロメーターのひとつです。この艶は皮膚を守るための油が作り出しているもので、毛に艶がない馬は内臓の調子が悪いか、または銅が不足しているなど、健康状態に問題あり。馬の体が健康なら十分に油膜が張り、艶めく美しい馬体に仕上がるというわけです。
健康な馬体を作るため、それを保つために必要な栄養素は「タンパク質」「炭水化物・脂肪」「ビタミン・ミネラル」。それぞれの役割は以下のようになっています。
タンパク質
筋肉を発達させたり、組織の修復や成長を促したり、体を作るために欠かせない栄養素です。競走馬や若い馬、繁殖馬と、成長や運動量に応じた量を与えます。不足するのもいけませんが、過剰に摂取するのも肝臓や腎臓の負担になるので適切な量を与えるのが大事です。
炭水化物・脂肪
どちらも生命活動の基礎であるエネルギーとなる重要な栄養素です。炭水化物は消化吸収が早く、即効性のエネルギー源。対して脂肪は消化が遅いのでエネルギー変換に時間はかかりますが、そのエネルギー量は炭水化物の2倍以上。個々の馬の役割や運動量に見合うよう、炭水化物と脂肪の2つをバランスよく与えます。
ビタミン・ミネラル
比較的多く必要とされるカルシウムやリン、マグネシウムなど7種類の必須ミネラルと、微量ながら欠かせない銅や亜鉛、鉄、コバルト、セレンなど8種類のミネラル、そしてビタミン類。これらは骨や歯を丈夫するためや、免疫力を高めるために必須で、食事から摂取しなければなりません。
特にカルシウムやリン、ビタミンA・D・Eは、成長期の馬や高齢の馬、出産を控えた繁殖馬には大切な栄養素となっています。適切に摂取することで健康維持やパフォーマンスの向上に繋がります。
不足しやすいものは?

近年の配合飼料にはミネラルバランスの優れたものが多くありますが、穀類や牧草と組み合わせて食事を与える場合、カルシウムやナトリウム、銅やセレンなどが不足しやすい傾向にあるようです。
もしこれらのミネラルが不足している時には、サプリメントを摂取したり、ミネラルがバランスよく配合されている塩で補います。特にナトリウムはミネラルバランスのいい高い品質の飼料を与えていたとしても、食塩などで別途補給することが奨められるミネラルです。
加えて全てのミネラルを必要量与えるだけいいというわけではなく、それぞれの栄養素の比率も調整がとれているかどうか注意しなくてはいけません。例えばカルシウムとリンは1.5~2:1、銅と亜鉛は1:3~4など、このように適正比率があるのです。
与え方のコツ

飼料の与え方のコツとして、必要な栄養素を過不足なく適正量与えること、栄養素のバランスを考慮することの他に、馬の状況に合わせて必要とされるバランスを導き与えることがあります。役割や目的が異なれば必要とされる飼料に違いが出るのは当然のこと。乗用馬と競走馬ではこのような違いがありました。
【乗用馬】
乗用馬に求められるのは安定した健康状態、そして穏やかな性格の維持。エネルギー量が過剰にならないように気を配り、穏やかさを保つために血糖値の上昇が緩やかな低GIの飼料や消化のいい飼料が選ばれます。また繊維質を多く与えることで腸内環境ひいては消化器系を整えます。
【競走馬】
レースで最高のパフォーマンスを求められる競走馬。瞬発力と持久力を保たねばなりません。レースはもちろん、レース前の激しい調教をこなすための速やかなエネルギー源として炭水化物、また筋肉の増量のためにタンパク質が多め。レースまで調子を落とさないようミネラルも欠かせません。中でも筋肉の疲労回復を助けるビタミンE、骨を強化するカルシウムやリンが多く含まれるものが選ばれるようです。
また主な飼料には、腸内環境を整えるため牧草や切草などで構成された「粗飼料」・エネルギーを供給するためエン麦などの穀物が含まれた「単味飼料」・複数の栄養素をバランスよくブレンドした「配合飼料」の3種類があります。
これらを年齢や健康状態、馬の役割によって、きちんと栄養が取れるよう組み合わせます。
まとめ
摂取する食物は違えど、必要な栄養素は馬もわたし達も同じでしたね。しかもそれぞれの仕事や発育、健康状態など個々の状況を見定めて、その馬に相応しい栄養素を組み合わせるとは驚きでした。馬にとっての食事とは、しっかりと馬の様子を観察して導き出す、栄養素のセミオーダーのようなものでしょうか。
馬が順調に成長できるように、また日々を健康に暮らしていけるように、馬と接する人達のそんな想いも込められているのかもしれませんね。








