【初心者向け】短鞭の使い方とポイント
乗馬を初めて、少しレッスンの難易度が上がってくると鞭を持ち始める方が多いのではないでしょうか?今回の記事では、初心者でも使用頻度の高い短鞭(たんべん)について使い方や注意点を解説します。
短鞭とは
そもそも「短鞭」とは、どのような鞭を指すのでしょうか?まずは、乗馬で使用する鞭の種類や、短鞭の役割を確認していきましょう。
鞭の種類いろいろ
乗馬をやっているとさまざまな形・長さの鞭に出会いますが、鞭の種類は大きく分けると3種類です。まずは、おおよその長さや特徴について表にまとめました。
鞭の種類 | 長さ | 特徴 |
短鞭 | 35~75cm程度 | 騎乗時に使用 先端は平たい形状 主に馬の肩に当てる |
長鞭 | 100cm前後 | 騎乗時に使用 先端は紐のような形状 主に馬の臀部に当てる |
追い鞭 | 150cm以上 | 調馬策を付けた状態で使用 長い紐状の鞭 馬の後ろから追う |
馬に騎乗しているときに使用するのは「短鞭」もしくは「長鞭」。そして、馬を調教するときや初心者の馬上体操を指導するときなど、馬に乗っていない状態の人が馬を走らせるために使うのが「追い鞭」です。
短鞭の役割
短鞭には、2つの役割があります。一つめは、補助的な扶助。そして、もう一つは馬を叱る道具。ただし、叱るために鞭を使うことには落馬などの危険が伴い、また馬との信頼関係が崩れる場合もあります。
そのため、初心者の方は鞭を叱るための道具とはとらえず「一度の扶助では馬が反応を示さなかった場合の補助」と考えてOKです。重い馬に乗る機会が多い方は、とくに短鞭を使う機会が多いかもしれません。
はじめは「鞭って可哀想じゃない?」「痛いのかな?」「急に走られたらどうしよう・・・」と不安ばかりだと思いますが、正しい使い方を知って上手く使っていきましょう!
短鞭の持ち方
では次に、短鞭の持ち方を見ていきます。長鞭も持ち方は同じなので、一度覚えてしまえば鞭の種類が変わっても安心ですね。
親指と人差し指でしっかり持つ
親指と小指の上に短鞭を乗せ、その上に人差し指・中指・薬指を乗せるように持ちます。言葉で言われると分かりにくいので、上の画像も参考にしてくださいね。
最初は「鞭を落とさないように」「手綱もしっかり握らないと」と余計な力が入りがちですが、あまりギュッと握ると鞭で小指が圧迫されて痛くなってしまうかもしれません。鞭は親指と人差し指でしっかり持ち、薬指と小指は支える程度にしましょう。
右手と左手どちらに持つかは、運動の方向や馬の癖などによって変えることがあります。とくに、障害前で必ず決まった方向に逃げてしまう馬などは「行ってほしくない方向」、例えば左に逃げてしまう場合は左手に持つことが多いです。
手綱と合わせて持つ
ところで「あれ?この持ち方なんだか見覚えがある・・・」と思いませんか?短鞭は、手綱とそろえて一緒に持つので「皆さんがいつも握っている手綱と同じ持ち方」と言っても良いですね。
さきほどは鞭と指の位置関係から握り方を説明しましたが、実際に鞭を持つときには先に手綱を握った状態で「人差し指・中指・薬指を開いて指と手綱のあいだに鞭を挟む」というイメージのほうが分かりやすいかもしれません。
効果的な使い方とポイント
鞭を握ったら、あとは必要に応じて鞭を入れます。最初のうちは「必要に応じて」の判断が難しいものですが、何のために鞭を使うか意識すると使うタイミングも分かりやすくなりますよ。
痛みでなく音で合図
短鞭の先端を見ると、平たい革(もしくは合皮)がループ状になっています。そのため、短鞭で自分の手のひらなどをたたいてみると、あまり力を込めなくても「パチン」ときれいに音が出ますよね。
短鞭からの刺激で馬が最も注意を向けているのは、叩かれた痛みなどではなく「音」だと言われています。馬が「痛いことをされる前に言うことを聞こう」とオドオドしているわけではないと知ると、少し安心する方もいるかもしれませんね。
ただし、痛みが伴わないとはいえ馬にとって短鞭は気になる存在。神経質な馬の場合は、肩に短鞭が微かに当たったり、騎手が鞭を持っているだけで急に走り始めてしまうこともあります。今乗っている馬の性格や反応を見ながら使う強さを調整しましょう。
注意を引くために使う
短鞭を使うときは「音や刺激が嫌なら言うことを聞きなさい」という感覚ではなく、「こちらに注意を向けてもらう」と考えてみましょう。人との会話に例えると「ねぇ」と話しかけても振り返らなかった友人の肩を軽くたたくようなものかもしれません。
相手の注意がこちらに向いている状態ならば、一度目の「ねぇ」と同じ声量で話しかけても相手は返事をしてくれるはず。それと同じく、一度扶助を出しても反応が薄かった場合が短鞭の使いどきです。馬が人に注意を向けたら、再度扶助を出してみましょう。
使うときの注意点
記事の前半で「短鞭は使い方を誤ると落馬などのリスクもある」とお伝えしましたね。そのようなリスクを下げるために、短鞭を使うときには注意すべきポイントがあります。
脚より先に使わない
短鞭はあくまでも扶助を出した後に補助的に使用するもの。脚や手綱を使った上で、その反応を見ながら鞭を使うことが大切です。逆に言えば、メインとなる扶助を出す前に短鞭を使うことはおすすめできません。
なにも扶助が出ていないのに鞭を入れられたら、馬としては「え?まだ何も頼まれてないのに早くしてって言われても…」という感じでしょうか。穏やかな馬ならばそれでも動いてくれるかもしれませんが、それだけで苛立って跳ねる馬などもいるので要注意です。
おしりへの鞭は要注意
冒頭で鞭の種類について少し触れましたが、騎乗中に持つ鞭としては「短鞭」と「長鞭」がありましたね。長鞭は手綱を持った状態のままで馬の腰あたりまで届きますが、短鞭ではそうはいきません。
短鞭で馬のおしりに鞭を入れる場合は、鞭を持っている手を手綱から放す必要があります。さらに「おしりに鞭を入れる」ということに慣れていない方にとって後方を見ずに鞭を入れるのはかなり難しいはず。
極めつけに、おしりに鞭を入れると大抵の馬は肩に鞭を入れたときよりも驚いて急激に動きます。もちろん「おしりに鞭」を指示するインストラクターもいますし、それ自体が絶対にするべきでない行為というわけではありません。
しかし、その際は「不安定な姿勢のまま、馬が急に動くかもしれない」ということを念頭に置いて、事前に片手でも手綱をしっかり張った状態にできていること、鞭を入れたらすぐ視線は前方に戻すことなどを意識しておきましょう。
まとめ
乗馬を始めて少し経つと、多くのライダーが使い始める「短鞭」。初めは鞭を使うこと自体に躊躇を感じたり緊張すると思いますが、適切な使い方&タイミングが身に付けば運動をスムーズに行うための良い補助となるはずです。