「こわい」が「楽しい」に変わるとき

馬に乗ってみたくて自ら乗馬を始めた方でも、最初は「馬上に乗ってみたら意外と高い」「馬をコントロールできなくて怖い」「落馬の危険性を感じる」など、恐怖心がついてまわるものです。初心者に不安が付きまとうのは当たり前。しかし怖さが拭えず、中には「自分は乗馬に向いていないのではないか。」と悩んでしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、大丈夫です。鞍数を重ねていく内にその「怖い」という気持ちが「楽しい」に変わる瞬間が訪れるはず。
今回はその時を逃さないよう、乗馬が「怖い」から「楽しい」へと変わるタイミングをご紹介しようと思います。
馬と心の距離が近づいたとき

馬に乗るという事は、馬とのコミュニケーションを楽しむ事でもあります。前回乗った時よりも馬と仲良くなれたと思えれば、乗馬の楽しさもより深く感じられるのではないでしょうか。
「今日は上手に乗れた」「苦手だった課題のコツがつかめた」「できなかった事ができるようになった」など、成功体験は「楽しい」に繋がります。そしてそれは全て人と馬とが共に成し遂げたと言っても過言ではありません。このように徐々に馬と気持ちが通じるようになってくると安心感が生まれ、不安や恐怖が解消すると同時に楽しさは増していきます。
さて、レッスンが終わればお手入れタイム。馬との距離をグッと縮める絶好のチャンスです。感謝の気持ちを込めて、馬が気持ちよくて喜んでくれるようなお手入れができるといいですね。愛情をもって接していると、馬も次第にその気持ちに応えてくれるようになります。本来は臆病で警戒心の強い馬ですが、信頼関係ができてくると甘える仕草をする事も。
目を細めながら頭や鼻を優しくすり寄せてきたり、手や体をハムハムしてきたり…。これは馬の愛情表現です。
こんな風に甘えられたら愛おしさが溢れてきて、また一緒に乗馬を楽しもうと思わずにはいられませんね。
馬が指示に応えてくれたとき

遥か昔、運搬や農耕などにおいて欠かせない存在だった馬は、やがて乗り手の指示を口の刺激で受ける馬具「ハミ」の発明によって騎乗する事が可能となり、より人間と馬との関係性は密になっていきました。言葉を持たない馬との対話は様々な扶助で行います。だからこそ馬の気持ちを読み取り、扶助によって自分はこうしたいのだと意思を伝えるのはとても大切です。
馬が指示に従ってくれてこそ乗馬の楽しさは増していくものですが、初心者の方は正しい乗り方もまだ身についていませんし、扶助の出し方もぎこちないものです。そんな中、レッスンにおいて馬が自分の指示に従って動いてくれた時の喜びはとても大きいものでしょう。
馬が指示に従ってくれたという事は信頼関係が一歩進んだ事に加えて、今までよりも難易度の高い課題に挑戦できる可能性が広がる事も意味します。新たなチャレンジにワクワクする時、それは未知なる楽しみの始まりです。
因みに食べ物が口に入っていないのに、口をもぐもぐさせたり、舌をペロペロ出したりするのは「チューイング」と言い、人間や他の物の動きに納得して安心した時や、相手に対して服従する時に見られる仕草です。指示を出す時にはこの馬が送るメッセージにも気付けるといいですね。
スランプから抜け出せたとき

乗馬を始めたばかりの頃はゼロからのスタートになりますから、最初は自分でも成長を実感できると思います。しかし何事も常に上達し続けるのは難しいものですよね。時にはどんなに頑張ってもうまくいかずに、スランプ状態から抜け出せなくなってしまう事もあるかもしれません。もしスランプになってしまったら、克服方法としてこちらを参考にしてみて下さい。
・上手な人が乗っているところを見る
インストラクターが乗っているところを見せてもらったり、動画サイトでレッスン動画や大会での実技動画を探してみるといいでしょう。口頭で教えてもらうだけですぐできるようになるとは限りません。特に動画だと繰り返し観る事ができ、自分のペースで理解を深められるのでおすすめです。
・自分の乗っている姿を確認する
理想の騎乗姿勢を確認したら、ビデオやスマートフォンなどで録画をして自分の騎乗姿勢をチェックしましょう。現状の把握はとても重要です。客観的に見ることで、やっていたつもりでもできていなかった事に気が付くかもしれません。自分だけではなく、扶助を出した時の馬の動きも一緒に確認してみて下さいね。
・リーダーシップを意識する
乗馬におけるスランプの原因の一つに、扶助に対して思ったような反応が返ってこない為にうまく課題をこなせないというパターンがあります。そんな時は気持ちを切り替えてリーダーシップをとる事を意識してみましょう。
リーダーシップとは分かりやすく一貫性のある態度や扶助で馬を導く事。決してリーダーシップ=強く主張する事ではないのでご注意を。
指示を出したら馬がどう反応しているかをしっかり受け取り、それに応じた次の扶助を出すように心掛けましょう。
・ポジティブマインドで騎乗する
長いスランプの中でモチベーションが下がっていってしまうのは仕方がないと思いますが、馬はそれを敏感に察知します。今一度「自分にできないわけがない」という前向きな気持ちで騎乗してみて下さい。単純な事ですが、意外と効果がありますよ。
スランプに陥るとどうしていいか分からなくなってしまうかもしれませんが、そんな苦難も馬と力を合わせて乗り越えられるのが乗馬の魅力。ふとスムーズな馬の動きに助けられてスランプから抜け出せる事があるかもしれません。
まとめ
乗馬を始めてみて「怖い気持ち」が「楽しい気持ち」に変化する時、それは何かを成し遂げた「うれしい気持ち」ともセットになっているような気がします。その傍らにはいつも馬という頼もしいパートナーの存在が。
馬と一緒にその瞬間を体験する事でいつしか乗馬に夢中になっていくのかもしれないですね。