東京2020 パラリンピックの日本馬術選手団 ナショナルチーム
ついにパラリンピックも始まりましたね。
今回は東京2020パラリンピックの馬術競技に出場する日本代表ナショナルチームの選考方法やメンバー、相棒となる馬について紹介していきます。この記事を読めばパラリンピックの馬術をさらに楽しめますよ。
パラリンピックの馬術についてよく知らないという人も、内容が気になる方も、ぜひ最後まで読んでパラリンピック馬術に興味を持ってもらえると嬉しいです。
東京2020 パラリンピック馬術概要
馬術競技日程 | 7/23(金)~8/7(土) |
開催場所 | 馬事公苑 |
競技種目 | 馬場馬術(団体・個人)・自由演技(フリースタイル) |
出場選手 | 稲葉 将、高嶋 活士、宮路 満英、吉越 奏詞 |
パラリンピック馬術の特徴
「コーラー」や「コマンダー」の存在
パラリンピック馬術は障がいの程度によってグレードⅠ~グレードⅤに分けられ、グレードの数字が小さいほど重度の障がいを持っています。オリンピック馬術との大きな違いは、演技に障がいをサポートする「コーラー」や「コマンダー」と呼ばれる人が付くことです。「コーラー」は馬の位置を声で知らせ、「コマンダー」は馬場外からコースや位置を伝える役割を持っています。
開催種目は「馬場馬術」のみ
オリンピック馬術では障害物を飛び越えながらゴールするまでのタイムを競う「障害馬術」という種目が人気となっていますが、パラリンピック馬術は演技の正確さや美しさを採点して競う「馬場馬術」のみで行われます。先に紹介したグレードごとに分かれて勝負が進められます。
馬具の改良も見どころの一つ
パラリンピック馬術には様々な一人一人異なる障がいを持つ選手が出場します。そのため、障がいの内容に関わらずできるだけ競技の公平性を期すために、馬具の改良が認められています。
手綱を握ることができない選手は口や首で操作できるように改良したり、指ではなく腕全体で操作できるように改良したりと、創意工夫を凝らした最大限の力が発揮できる馬具を使用します。長年試行錯誤して開発されてきたこのような馬具に注目するのも、みどころの一つになるでしょう。
東京2020パラリンピック馬術選手の選考方法
日本の開催国枠は4つです。代表選考は2019年3月から2021年6月15日までの間に行われる試合が対象で、この期間の国際馬術連盟の基準を満たす大会に2試合以上出場して、2試合分の合計得点率に基づくランキングで上位の選手が代表に選ばれます。日本障がい者乗馬協会が代表選手を正式決定するのは2021年6月に開かれる理事会です。今回の東京パラリンピックでは下で紹介する4人の選手が選出されています。
東京2020パラリンピック ナショナルチームのメンバー
ここでは東京2020ナショナルチームのメンバーと馬について詳しく解説していきます。
稲葉 将(いなば しょう)選手
稲葉選手は先天性の脳性まひにより両足に障がいを持つ選手です。愛馬は2019年にペアを組んで新しい「カサノバ」。
日本のエースとして期待されている25歳の稲葉選手は足の力が弱く、馬への指示がうまくできないため、乗りこなすのは至難の業。出場するグレードはⅢ。小学校6年生から障がいのリハビリのために乗馬を始めたそうです。2017年からは東京パラリンピックの出場を目指してトレーニングを続け、静岡市の乗馬クラブを拠点として活動をしています。なんと馬術競技に本格的に取り組み始めてからわずか1年で2018年の世界選手権に出場するなど周囲にその才能をみせつけ、見事東京パラリンピック出場の切符を手にすることとなりました。
高嶋 活士(たかしま かつじ)選手
高嶋選手は右半身にまひなどの障がいを持つ選手です。愛馬は「ケネディ」。
中学卒業後には競馬会を目指して競馬学校に入学。161cmという身長が抜群に活きる競馬会に入るため、3年間の全寮制の学校での生活を終え、2011年に騎手デビューをしました。パラリンピック馬術で出場するグレードはⅣ。日本中央競馬会(JRA)で騎手として活躍していましたが、2013年に落馬事故によって障がいを負い、その後現役を引退しています。9か月もの入院期間の中、競馬界への復帰をあきらめ、パラリンピック馬術に転向しています。2018年の世界選手権に出場するなどの経験を積んで初めてのパラリンピック代表に選ばれました。
これまでスピードを求められる競馬で活躍していましたが、馬術では美しさが競われます。同じ馬に乗る競技でありながら、まったく違う競技性に人一倍の努力で対応していった高嶋選手。現在練習拠点としているクラブはリオデジャネイロオリンピックで日本代表馬術監督を務めた照井愼一氏が代表をする名門。ドイツ生まれの11歳、ベテランの愛馬ケネディとの初のパラリンピックでの活躍が期待されています。
宮路 満英(みやじ みつひで)選手
宮路選手は前回のリオパラリンピックにも出場している63歳のベテラン。高校生の頃から馬に魅せられ、調教助手として20年以上活躍していましたが、47歳、2005年に脳卒中で倒れ右半身に重い麻痺が残りました。高次脳機能障がいと診断され、リハビリのためにパラリンピック馬術に挑戦し、2大会連続で日本代表として活躍することとなりました。演技をサポートするのは妻の裕美子さん。入賞を狙って練習を積み重ねています。
競技では複雑なコースを正確に移動する必要がありますが、記憶障がいを持つ宮路さんのサポートをするのが妻の裕美子さんです。宮路さんと馬のコミュニケーションだけでなく、妻の裕美子さんとの息のピッタリと合った演技にも注目です。
吉越 奏詞(よしごえ そうし)選手
吉越選手はなんと現役の大学生です。脳性麻痺の障がいを持ち、出場グレードはⅡ。中学生の頃からパラリンピック馬術出場を目指して練習を重ね、ついにその夢を実現しています。日本のパラリンピック馬術界でも最も注目される若手です。
吉越選手のツイッターでは、愛馬「エクセレント」との深い絆を感じることができます。
ただいまです!
— 【official公式】吉越奏詞 SOSHI YOSHIGOE (@soshihorse) July 3, 2021
雨天だったので安全に配慮しながら久々にエクセレントに乗ることができました!!
これからも、たくさん練習をよろしくお願いします🤲🏻#アスール乗馬クラブ#馬術#馬場馬術#dressage#馬術競技#パラリンピック#Paralympics #東京2020 #Tokyo2020 #スポンサー募集
#東京五輪 https://t.co/rkEdC2mvv0 pic.twitter.com/SCC986Sull
馬術競技では障がいを持つ選手を受け入れてくれるクラブは少なく、始めはなかなか練習場所も見つけられなかったそうですが、静岡乗馬クラブでロンドンパラリンピックに出場した経験のある浅川信正氏にコーチを務めてもらうことになり、指導を受けることとなりました。
まだまだ東京パラリンピックは通過点と話している吉越選手。さらに経験を積み、活躍していく今後が楽しみな選手です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
パラリンピック馬術は人馬一体となって男女ミックスで行われる馬場馬術で競われる大会。
やはり一番の魅力は、オリンピック・パラリンピックを通して、唯一人間と動物が力を合わせて競技を行うという点です。
それぞれの選手の身体能力だけでなく、馬とのコミュニケーションや障がいに合わせた技術の磨き方など、性別や年齢関係なく多くの人が観て楽しむことができるスポーツです。
東京パラリンピックに出場する選手は4人。4年に一度のスポーツの祭典が行われるこの機会に、ぜひパラリンピック馬術を楽しんでみてくださいね!