特徴的な馬具と乗馬スタイルを持つ国

乗馬の目的やスタイルは国によって、違いがあります。スタイルが違うのであれば、馬具にもかなりの違いが出るようです。今回は、独自の乗馬スタイルを発展させたことで有名な4ヵ国、モンゴル、イギリス、スペイン、アメリカで用いられる馬具について、調べてみました。
モンゴル

乗馬はモンゴルでは遊牧民の移動手段です。男の子が一定の年齢になったときや女性が結婚する際に、鞍をプレゼントされるという文化的な背景もあります。鞍や頭絡のプレゼントはモンゴル人にとって、とても特別なものなのだそうです。また、モンゴルの鞍も男性用、女性用、競馬場、装飾用など、用途によって少しずつ違うようです。
遊牧民は牧草を求めて、かなりの距離を移動するので長時間乗っても、馬にも人間にも負担の少ない立ち乗りで移動します。そのため、馬具も立ち乗りに適した形になっているようです。鞍は木製で前矯も後矯も高いつくりです。その高くなっている前矯に体をつけて、立ったまま騎乗します。体を前矯につけることによって、立ち乗りでも3点が接するため、バランスがとりやすく、反動も抜く必要がありません。さらに鐙も立ち乗りしやすいように、足の裏と接する面が広く作られています。頭絡はロープで作られています。手綱は輪になっているものを片方の手で持ち、鞭の代わりにロープや木の枝などを使用します。
モンゴルには日本から乗馬ツアーで出かける方も多いようです。ブリティッシュの鞍に慣れた人が多い日本人のツアー客向けの鞍には、座って騎乗できるように革製のモンゴル鞍を用いたり、木製のものにクッションが括り付けられていたり、ブリティッシュの鞍を使ったりしているところも多いようです。
イギリス

日本では、もっともなじみのあるのがブリティッシュの鞍です。乗馬はヨーロッパで貴族が騎乗技術を競い合ったことが起源とされており、現在、ブリティッシュスタイルの乗馬はスポーツとして広く親しまれています。ブリティッシュスタイルには、馬場馬術、障害馬術、総合馬術といった競技があり、それぞれに適した鞍が用いられます。
馬場馬術用の鞍は、騎座の安定をサポートできるようにあおり革が長く、後矯(鞍の後ろの部分)が高くなっています。逆に障害馬術用の鞍は、飛越の際に邪魔にならないよう、後矯が浅く、あおり革は短くなっています。その中間の作りになっているのが総合馬術でも使用する総合鞍です。どちらにもある程度対応できるつくりになっているため、乗馬クラブのレンタル鞍は総合鞍であることが多いでしょう。
ブリティッシュの鞍は競技でのパフォーマンスを高めることに重点を置いていると言えます。頭絡も含めて、本革か合皮で作られており、耐性を高めながらも、適切なお手入れと修理を施せば、長く愛用できます。ブリティッシュの鞍は無駄を省いた機能性とエレガントさを兼ね備えた鞍になっています。
スペイン
乗馬が盛んなスペインでも鞍は独自の発展を遂げました。スペインの馬と言えば、最初に思いつくのがアンダルシアン。アンダルシア地方で生産された馬の総称で、別名「スパニッシュホース」。闘牛士がまたがる馬といえばイメージが湧きやすいかもしれませんね。土着の馬にヨーロッパの馬やアフリカの馬を交配して確立した品種です。後躯が強く、軍用としても重宝しました。
アンダルシアンにも用いるスパニッシュサドルはブリティッシュに比べて大きくて厚みがあり、後矯が高くなっています。仕事で騎乗する際の快適さを求めたつくりになっています。鐙は三角形をした大きなつくりになっているので、足の裏全体でコンタクトするイメージ。ただ、大きく重いため、普段、ブリティッシュで乗っている方は慣れるまで若干、乗りにくく感じるのだそうです。頭絡には額革のところにひも状の虫除けがついています。スペインの鞍は、仕事用としての実用性を保ちつつ、美しい装飾が施されています。
アメリカ

アメリカの乗馬スタイルと言えば、ウエスタン。カウボーイたちは、牛を追ったり、郵便を届けたりするなど、長い時間乗っていることが多いことから、鞍も騎乗スタイルそのものも、長時間の騎乗に適したものになっています。座る部分は幅が広くがっしりしていて安定感があり、ライダーの体に負担が少ないつくりになっています。
ブリティッシュの鞍との大きな違いは、前矯部分にホーンと呼ばれるものがついていること。バランスを崩しても、ここをつかめば落ちないことから、日本では観光牧場の引き馬や体験乗馬に使われることもあります。カウボーイはホーンに投げ縄をかけておいたり、荷物を括り付けたりといった使い方をするようです。さらにウエスタン鞍は鐙が革製であることも大きな特徴。美しい装飾もたくさん施されていますが、装飾品がたくさんついていると鞍自体が重くなってしまうのだそうです。
頭絡にはハミを使用するものと使用しないハッカモアと呼ばれるものがあります。ハッカモアは手綱を鼻革に装着して鼻梁やうなじに圧力をかけます。ウエスタンでは馬の首に手綱をつけてコントロールするため、ハミがなくてもコントロールできることから、ハッカモアを使うライダーもいるようです。ハッカモアはウエスタンスタイルで乗るとき以外にも歯に問題があったり、口が敏感すぎてハミを受け付けない馬にも使用できます。
まとめ
今回は4ヵ国の乗馬スタイルとそのスタイルに適した馬具について解説しました。馬具はその国での乗馬の目的に応じて発展してきました。文化的な背景が影響を及ぼしているので、この記事で挙げた4ヵ国以外の馬のお祭りやイベントに出かけてみたら、また新たな発見があるかもしれませんね。