【見逃さないで】馬からの愛情表現

「馬と言葉を交わせることができたらいいな。」皆さんはそんな風に思ったことはないでしょうか。
もちろん馬は言葉を発しませんから、わたし達は乗馬の大切なパートナーである馬の気持ちを仕草から読み取ろうとしますよね。言葉で意思疎通ができないからこそ良好な関係を構築する為に、普段から馬が嫌がるような身勝手な騎乗をしないようにしたり、上手に指示に従ってくれた時にはきちんと褒めたり、乗馬の後は感謝の気持ちを込めてお手入れをしたり。そうやって気配りをしつつ行動し、馬との信頼関係を築いていきます。
しかし馬に愛情を注ぐことに夢中になり過ぎて、馬からの愛情表現を見逃していませんか?
馬は頭がよく、普段お世話をしてくれる人や信頼できる人を覚えています。また馬は群れの中で序列を作って生活する動物なので、騎乗の際に指示をはっきり伝えるなどリーダーシップが取れていればきちんと認めてくれます。馬からのアプローチに気づかずスルーしてしまうのは勿体ないですね。
今回は馬からの好意をしっかりキャッチできるよう、どんな仕草で愛情を示してくれるのか調べてみました。
体や手を舐めてくる

甘えている時やちょっかいを出している時の愛情表現として、体や手を舐めてきたり、ハムハムしてきたりすることがあります。これは馬が信頼できる人と認識して心を許している証拠。何より甘える仕草がとても可愛らしくて癒されますよね。
ただ、甘えてきたからといって楽しく遊んでいると馬のほうもテンションが上がり、うっかり甘噛みしてくることがあるのでご注意を。甘噛みも愛情表現のひとつではあるのですが、馬の力ですからけっこう痛いです。
また愛情表現とはちょっと違いますが、食べ物が入っていないのに口をもぐもぐさせたり、舌をペロペロ出したりする「チューイング」も覚えておきましょう。人間や他の物の動きに納得して安心した時、相手に対して服従する時にみられる仕草です。騎乗中に指示を出して馬がチューイングをしていたら、「あなたの指示に従いますよ。」というサイン。仔馬が母乳を飲んでいた時の名残からきていると言われています。
頭や鼻をスリスリしてくる

馬が目を細めながら優しく頭や鼻を摺り寄せてくる動作、これも甘えたい時の仕草です。穏やかな表情でスリスリしてきた場合は心を開いてくれていると考えていいでしょう。
競馬のパドックでは馬が厩務員さんの方を向きながら歩いているシーンがたびたび見られます。横向き首という集中力を欠いた仕草であることも多いのですが、それとは別に甘え首と言って大好きな厩務員さんにスリスリして甘えながら歩いている光景です。中には「甘え首の馬はリラックスできている状態なのでよく走る。」との意見を持つ方もいらっしゃるみたいですよ。
愛情表現じゃない場合も

実は「頭をスリスリされる=愛情表現」ではないパターンもあります。
・乗馬を楽しんだ後に下馬すると袖に馬が頭を擦りつけてきたので「甘えているのかな。」と思っていたら顔がかゆいだけだった
・普段甘えてこない馬にスリスリされて喜んでいたら鼻水を拭いていただけだった
馬の方から近づいてくれると思わず喜んでしまいますが、これはありがちなお話のようです。
馬は群れに序列を持つ動物と前述しましたが、リーダーの体を利用してかゆみを和らげたり、鼻水を拭いたりするとはあまり考えられません。それでもスリスリされているのかもしれないと嬉しくなってしまう気持ちはとてもよく分かります。
もっと仲良くなるために

馬からの信頼や愛情を得る為にはどのような事をしたらいいでしょうか。
馬は嫌なことをよく覚えていますが、嬉しかったこともちゃんと覚えています。騎乗後のお手入れがコミュニケーションを深める絶好のタイミング。馬が喜ぶことをたくさんしてあげるといいですね。
例えば騎乗後は喉が渇いているかもしれないので、お手入れの前にまずお水をあげてみましょう。
下馬をした時に頭を擦り付けようとしてきたら、顔や頭を水分を含んだ柔らかいタオルで優しく拭いてあげると喜んでくれるのではないでしょうか。
ブラッシングの仕方や好きなごはんなど馬の好みを把握して丁寧に接し続けていけば、自分のことを大切にしてくれる人だと徐々に理解してくれるようになると思います。
また最近では馬の行動学やボディランゲージを取り入れた調教法「ナチュラルホースマンシップ」を書籍や講習会で学ぶことができます。ナチュラルホースマンシップとは、リーダーに従う馬の習性を活用して人間がリーダー馬の代わりとなり、馬に負担のないよう自然な形で良好な関係を築いていくというもの。馬にリーダーとして認めてもらうことを重視しています。
まとめ
乗馬を楽しむ方は馬が大好きな気持ちにあふれているでしょうし、馬と仲良くなりたいと思っていることでしょう。馬への愛情はいつかきっと届くと思います。その大切な瞬間を感じ取れるよう、馬の愛情表現を理解して見過ごさずにしたいですね。