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馬の睡眠

馬の睡眠

馬は私たちが思うよりずっと短い睡眠時間で生活している動物です。立ったまま眠る姿を見たことがある人も多いかもしれませんが、その背景には草食動物として進化してきた独特の体の仕組みがあります。
睡眠は健康や行動に大きく関わるため、その仕組みを知ることは馬を理解するうえで欠かせません。

今回は、馬の睡眠について解説します。

睡眠時間は何時間?

馬の睡眠

馬の睡眠時間は、一般的に1日あたりおよそ2〜3時間ほどとされています。
人間のように夜にまとめて長く眠るのではなく、数分から数十分の短い休息を何度も積み重ねる「分割睡眠」が基本です。これは、馬が草食動物として常に周囲を警戒しながら生活してきた歴史に由来します。長時間無防備になることは危険につながるため、短い睡眠を繰り返すスタイルが定着しました。

馬の睡眠には浅い眠り(ノンレム睡眠)と深い眠り(レム睡眠)があり、浅い眠りは立ったままでも取ることができます。しかし、深い眠りに入るためには横になる必要があります。深い眠りは1回につき10〜20分程度で、1日の中でもごく短い時間しかありません。横になって眠る姿をあまり見かけないのは、馬が深い眠りに入る時間そのものが少ないためです。

また、睡眠時間は年齢や体調、環境によっても変化します。
子馬は成長のために多くの休息を必要とし、横になって眠る時間も長くなります。一方で高齢馬は関節の違和感や筋力低下により横になりにくくなることがあり、睡眠の質が低下しやすい傾向があります。環境も重要で、騒音が多い場所や落ち着かない馬房では、横になる時間が減り、睡眠不足につながることがあります。

馬が十分に眠れていない場合、行動や表情に変化が現れます。
落ち着きがなくなる、反応が鈍くなる、あくびが増える、食欲にムラが出るなどが代表的なサインです。睡眠不足が続くと、立ったまま意識を失い、崩れるように転倒してしまうこともあります。

馬の睡眠は短いながらも、健康やパフォーマンスに大きく影響する重要な要素なのです。

他の動物の睡眠時間との比較

馬の睡眠

馬の睡眠時間は、他の動物と比べると極端に短い部類に入ります。
たとえば、犬は1日12〜14時間、猫は15〜20時間ほど眠るとされており、肉食動物は長時間の休息を取る傾向があります。これは、狩りをする動物が短時間でエネルギーを消費し、その後長く休む生活スタイルを持っているためです。

一方、馬は草食動物であり、低エネルギーの草を大量に食べて体を維持する必要があります。そのため、食事に多くの時間を使わなければならず、長時間眠る余裕がありません。牛も同じ草食動物ですが、反芻によって効率よく栄養を吸収できるため、馬よりはやや長い3〜4時間の睡眠を取るとされています。

また、野生下と飼育下でも睡眠時間に差があります。
飼育されている馬は安全な環境で暮らしているため、比較的落ち着いて休むことができますが、野生の馬は捕食者から身を守る必要があるため、睡眠時間は2時間以下になることもあります。
群れで生活する馬は、数頭が横になって休む間、他の馬が立ったまま周囲を見張るという習性があり、これも睡眠時間の短さに影響しています。

犬や猫のように無防備な姿で眠ることが少ないのは、馬が「眠る=危険にさらされる可能性がある」という本能を持っているためです。

環境の変化やストレスがあると、横になる時間がさらに減り睡眠の質が低下します。馬の睡眠は、動物の生活スタイルや進化の歴史を反映した特徴的なものだといえます。

立ったまま眠れるのは何故?

馬の睡眠

馬が立ったまま眠れる理由は、脚に備わった特殊な構造にあります。
馬の脚には「滞留装置(ステイアパラタス)」と呼ばれる仕組みがあり、関節をロックした状態で筋肉をほとんど使わずに体を支えることができます。この構造によって、馬は力を抜いたまま直立姿勢を維持し、浅い眠りに入ることができます。

滞留装置は、主に繋靭帯や種子骨靭帯などが連動して働くことで成り立っています。これらの靭帯が球節を支え、関節が折れないように固定するため、馬は脚の力を抜いても倒れずに立ち続けることができます。立ったまま眠ることができるのは、草食動物として進化する中で身につけた生存戦略のひとつです。

しかし、立ったまま眠れるのは浅い眠りだけで、深い眠り(レム睡眠)に入るためには横になる必要があります。深い眠りは体の回復に欠かせないため、馬が横になれる環境かどうかは健康管理の重要なポイントです。横になって眠る姿が見られるのは、馬がその場所を「安全」と感じている証拠でもあります。

また、立って眠るときは4本の脚すべてに体重をかけているわけではなく、1本の脚を休ませながら交互に負担を分散しています。これは、長時間立ち続ける馬にとって効率的な休息方法です。横になる時間が極端に少ない馬は、深い眠りが不足し、行動の変化や疲労の蓄積につながることがあります。

立ったまま眠れるという特徴は、馬の体の仕組みと本能が組み合わさって生まれたものです。馬の睡眠を理解することで、日々の健康状態やストレスの有無を読み取る手がかりにもなります。

まとめ

馬の睡眠馬の眠りは、短くても確かな休息として日々の生活を支えています。立ったまま目を閉じる姿も、横になって深く眠る姿も、どちらも馬が自分の体と向き合う大切な時間です。
環境が変われば眠りの質も変わり、その変化は心や体の状態を映し出します。馬の睡眠を理解することは、ただ知識を得るだけでなく、馬という動物の繊細さや強さに気づくきっかけにもなります。

馬が安心して休める時間を大切にすることは、より良い関係を築くための一歩になるのです。

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