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大切な役目を担っている「ハフリンガー」

皆さんはハフリンガーという馬の品種をご存知ですか?
とても美しい毛色を持つことで有名なハフリンガーですが、実は大きな役目を持つことでも大変有名な馬なのです。

人間同様、馬にも血液型があります。
人が輸血をおこなう際には双方の血液型が適合していないと大変なことになりますが、馬も同様に血液型が適合していないと、最悪の場合命を失うこともあります。
ハフリンガーはその特徴的な血液型から、多くの馬へ輸血することが可能なのです。

今回はハフリンガーについて、その特徴と大切な役目についてまとめました。

起源

大切な役目を担っている「ハフリンガー」
ハフリンガーは、イタリア北部とオーストリアにまたがるチロル地方を原産とする馬です。その起源は中世に遡ります。

起源と歴史

ハフリンガーの祖先は、中世にこの地域に存在した山岳馬に、アラブ種などの東洋系の小型馬が交配されたことで生まれたと考えられています。険しい山岳地帯での運搬や農耕に適した、丈夫で足のしっかりした馬が求められた結果、ハフリンガーの原型が形成されました。

19世紀に入り、品種改良が本格的に行われるようになりました。特に、1874年に生まれた種牡馬の子孫たちが、ハフリンガーの血統を確立していきました。

名称の由来

ハフリンガーという名前は、原産地であるイタリア北部、現在のボルツァーノ自治県にあるハフリング(Hafling/イタリア語名ではアヴェレンゴ Avelengo)という村の名前に由来しています。

この地域はオーストリアのチロル地方にも近く、山岳地帯で農耕馬としてハフリンガーが活躍していました。そのため、地名がそのまま品種名になったと言われています。

原産地の環境

ハフリンガーが生まれたチロル地方は、険しい山岳地帯であり、厳しい自然環境です。そのため、ハフリンガーは寒さや粗食に強く、足腰が丈夫な馬として発達しました。
この環境が、ハフリンガーの強健な体格と不屈の精神を育んだと言えるでしょう。

身体的特徴

大切な役目を担っている「ハフリンガー」
ハフリンガーは、その美しい外見と穏やかな性格で知られる馬です。

体高は約130cm程度で、ポニーに分類されます。しかし、体幅が広く筋肉質でパワフルなため、体格の良い大人でも乗ることができます。

全てのハフリンガーの毛色は栗毛です。明るい金色に近いものから、濃い赤褐色に近いものまで、様々な色調の栗毛が存在します。
たてがみと尾は淡色(白、亜麻色、クリーム色など)で、栗毛とのコントラストが美しく、ハフリンガーの大きな特徴となっています。

体幅は広く、がっしりとした体格をしており、筋肉がよく発達して力強い印象を与えます。脚も太く、しっかりとしています。
また背中が非常に強く、重い荷物を運ぶのにも適しています。

性格は穏やかで人懐っこく、好奇心旺盛です。そのため、乗馬初心者や子供の乗馬にも適しています。

また病気にかかりにくく、粗食にも耐える丈夫な体を持っています。そのため、原産地では農耕馬としても重宝されてきました。

ユニバーサルドナーとしての働き

大切な役目を担っている「ハフリンガー」
「ユニバーサルドナー」とは、輸血において、血液型に関わらず誰にでも輸血できる血液を持つ個体のことを指します。人間の場合はO型がこれに当たります。馬の場合、特定の血液型を持つ個体がユニバーサルドナーとなり得ることが分かってきました。

ハフリンガーがユニバーサルドナーとなり得る理由

ハフリンガーは、他の馬種に比べてユニバーサルドナーとなりうる特定の血液型を持つ割合が高く、この血液型を持つ個体の血液は、他の多くの馬に輸血しても副作用が少ないとされています。そのため、ハフリンガーはユニバーサルドナーとしての役割を期待されているのです。

ユニバーサルドナーの利点

手術の前に血液型適合検査を行う時間がない緊急時でも、ユニバーサルドナーの血液は迅速に輸血できます。これは、特に子馬の治療など、一刻を争う場合に非常に有効です。

常に複数の血液型を準備しておく必要がなくなり、輸血体制を効率化できます。そして、血液型不適合による輸血副作用のリスクを大幅に軽減できます。

ハフリンガーの導入

日本軽種馬協会などでは、ハフリンガーをユニバーサルドナーとして導入する取り組みが進められています。これにより、子馬の免疫低下や貧血などの治療をはじめ様々な治療に役立てられることが期待されています。

ハフリンガー種の国内における近親交配の増加を抑制する目的で、イタリアから種牡馬が導入されるなどの取り組みも行われています。

注意点

全てのハフリンガーがユニバーサルドナーになりうるわけではありません。

ユニバーサルドナーになるためには血液型の条件を満たしていないといけませんが、サラブレッド種の場合はこの条件を満たす馬は全体の0.3%ほど、すなわち1,000頭に3頭の割合でしか存在しないとされています。

ハフリンガー種の場合はおよそ8割の馬がこの条件を満たしています。
このような点から、ハフリンガーはユニバーサルドナーとして適していると言われますが、2割程度のハフリンガーはユニバーサルドナーとして適さないということになります。

まとめ

大切な役目を担っている「ハフリンガー」

いかがでしたでしょうか?

今回は、ハフリンガーについてその特徴や、ユニバーサルドナーとしての役目についてまとめました。

人の血液型でも、O型の人はどの血液型の人にでも輸血できるユニバーサルドナーですが、まさか馬にもユニバーサルドナーとなれる個体がいるとは意外でした。

見た目の美しさにばかり注目しがちですが、他の馬の生命を救う一助を担っているハフリンガーに、今後も注目していきたいですね。

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